■2002/07/05 (金) 失業給付の正しい給付を

 昨日開かれた労働政策審議会雇用保険部会で、雇用保険料の弾力条項を発動
し、失業給付等の保険料率を現行1.2%から上限の1.4%に引き上げることで労
使が合意したそうです。現実の引き上げは、正式な答申の後の10月になる見
通しとのこと。もともと、弾力条項は、前回の雇用保険法改正の際に、一定の
要件のもとに厚生労働大臣の判断で0.2%で上下できることとしたわけですか
ら、すでに現状発動要件を満たしている以上は、異論を唱える筋合いのもので
はないということでしょう。
 とはいえ、経営サイドとしては、やはり料率を上げる以上は単に上げるだけ
ではなく合理化努力を求めたいというのも当然のことでしょう。昨日の部会で
は、もっぱら職安の業務の強化が取り上げられたようです。要するに、「再就
職するつもりはないが、失業給付を受けるために求職する」とか、「現実には
アルバイト等で就労しているのに、失業給付を受けている」といった、給付の
趣旨に反した受給をなくすためのチェックを強化する、というわけです。具体
的には、申告書の様式を改正して、求職活動の活動日、応募先企業、活動内容
などを具体的に記入させ、抜き取りで応募先企業に求職活動の事実を確認する
などのチェックをかけるということのようです。
 それでも、知り合いの事業主に頼んで口裏を合わせてもらうなどの抜け道は
ありますが、やらないよりはやったほうがはるかにマシでしょう。むしろ問題
は、本当にこうしたチェックがきちんと行われるかどうかの方でしょう。職安
の窓口の現実として、自己都合退職の離職票を持ってきた求職者に対して、
「会社都合にした方が給付日数が長い」などという「指導」を行う職員がいる
というのが実態です。労働省の中には階級的な労働運動があり、職員の中には、
給付日数や水準の削減に対して批判的な人もいることから、チェックもなかな
か徹底しないのではないと心配されます。労働運動が悪いとは言いませんが、
職務は職務としてきちんとやってもらいたいものです。

■2002/07/04 (木) キヤノン、取締役を増員

 今朝の日経新聞に、キヤノンが取締役を現行の21人から30人に増員するとい
う記事が掲載されていました。このところ、「取締役会の議論を活性化し、意
思決定の迅速化するには人数は少ない方がよい」として取締役会をスリム化し
たり、「事業の執行は執行役員の役割」ということで執行役員制を導入するな
ど、取締役の人数を減らすことが流行になっているだけに、ちょっと意外な感
がありますが、優良経営で知られるキヤノンだけに、注目を集めそうです。
 記事によると、キヤノンは95年に取締役を27人から21人にスリム化したのだ
そうで、それをまた元に戻すということですから、減らしすぎて都合が悪かっ
たという面があったのでしょう。「担当事業を指揮する権限をもつ取締役が多
数いたほうが現場本位で経営をスピード化できる」とのことですから、やはり
ある程度ビジネスの現実に通じた人をまじえなければ、経営トップとしても的
確な判断をくだせないということだったのではないでしょうか。今、社外取締
役を入れろとか増やせとかいう議論がさかんなのに対し、社外の人がいったい
どれだけ具体的な議論に参加できるのか、という疑問が根強く持たれているわ
けですが、その疑問を裏付ける事例といえるのではないでしょうか。
 また、「社内昇格させることで社員の競争意識を高める」ということもある
のだそうで、これもよくわかる話です。ある意味これは昔からある問題で、年
功的に昇格させる、あるいはモラル維持のために昇格させるといった昇格圧力
によって取締役会が肥大してきたという問題点の裏返しです。執行役員制も、
かなりの部分は「一定の昇格は維持しつつ、取締役会は肥大させない」という
意図で導入されているのが実態でしょう。
 いずれにしても、米国流経営とは明らかに逆行する方向性であり、これが他
社にも波及してアメリカ追随の揺り戻しにつながっていくのか興味深いところ
です。

■2002/07/03 (水) あさひ銀行、そろり賃下げ?

 今朝の日経新聞の、とても小さな記事によれば、あさひ銀行が人事制度を変
更し、従来の総合職と一般職の区分をなくすことにしたそうです。一般職採用
の行員を管理職に抜擢して人事の活性化をめざすのだとか。
 コース別人事制度というのも賛否両論ありますが、基本的には従来のコース
のない人事制度においては、補助的・定型的な仕事に終始している人でも、年
功的に賃金が上がってしまい、「お茶だし・コピー取り30年で年収1000万円」
というケースが出てきたことへの反省として、補助・定型業務を「一般職」と
して別コースにして、昇給も小さく、場合により上限も低く設定するようにし
たものであるはずです。
 それをまたやめる、というのは一見して不思議な感じがします。記事によれ
ば「給与体系を一本化、同じ20段階で給与を支給する」ということですから、
上限も同じ、昇給ピッチも同じにするということでしょう。となると、単純に
一般職の制度を総合職の制度に合わせたということだと、かなりのコストアッ
プになってしまうからです。今のあさひ銀行は、失礼ながらそんな陽気ではな
いでしょう。
 実際、記事によれば、「人件費全体では抑制効果を狙っている」「一般職よ
りも給与が下回る総合職も出てくる」となっています。ということは、この際
賃金等級も新しいものとして、総合職もふくめて付け替えるということなので
しょうか。ということは、一般職でコストアップする分は総合職でコストダウ
ンさせるということであり、すなわち総合職にとっては「賃下げ」ということ
になるのでしょう。記事には「一般職行員で支店長などに登用されるケースが
出る」とありますが、すぐにもそういう人がいるという感じではありません。
あさひ銀行のホームページを見ても、この制度変更はニュースリリースされて
おらず、外向けにPRしようという意図はなさそうです。
 それやこれやあわせて考えてみると、現実のところは、「コースのない新人
事制度を導入」することで、「一部の賃金水準を引き下げる」ことがねらいな
のではないかという気がします。

■2002/07/02 (火) 女性の完全失業率、過去最高に

 先月末に発表された5月の完全失業率は5.4%と、4月に較べて0.2ポイント
の上昇になったそうです。とりわけ女性の失業率は5.3%と過去最悪となった
ということで、景況には底打ち感があり、きのう発表された6月の日銀短観で
も大企業の景況感が大幅に改善する中ではありますが、雇用失業情勢の改善は
遅れているようです。もっとも、5月の有効求人倍率は4月から0.01ポイント
改善し、3ヶ月連続の上昇となったということで、失業率は景気の遅行指標と
言われているので、追って改善してくるのかも知れません。もっとも、有効求
人倍率は改善したとは言ってもまだ0.53倍ですから、当分の間はジョブレス・
リカバリーを覚悟しなければならないでしょう。
 さて、女性の失業率が高まっていることについて、厚生労働省は「女性社員
も例外なくリストラされた」ことによるものとコメントしているそうです。女
性の会社都合離職が増加し、女性の正社員は前年同月比で44万人減少している
のだそうです。就業者数の減少は製造業、建設業が相変わらず大きいのですが、
女性正社員の減少は流通業を中心に進んでいるということで、女性の就労が多
い大手スーパーが不採算店を閉鎖していることなどが原因ということなのでし
ょうか。
 その一方で、非正社員の雇用は依然として増加傾向にあり、女性についても
有期雇用は逆に13万人の増加になっているそうです。有効求人倍率も、上昇に
貢献しているのはパートタイマーの求人増で、正社員の求人はむしろ減少して
いるということです。
 女性の正社員が退職を余儀なくされる一方、女性の求人はパートなどの非正
社員ばかりで安定した勤め口はないという状況ですから、再就職は進みにくい
状況にあると言えるでしょう。経済や家計の現状を考えると簡単に非労働力化
するとも考えにくく、当分の間は失業給付を受けながら有利な再就職先を探し、
給付が切れた時点でより幅広い再就職を考えることになるでしょうから、この
失業率がすぐに下がるということは考えにくいのではないかと思います。

■2002/07/01 (月) 総会屋をちやほやするな

 「株主オンブズマン」なる団体が、ソニーの株主総会で「個人別の役員報酬
の開示を定款に定める」ことと「取締役会が取締役選任を提案するにあたって
は男女共同参画社会基本法の理念に則ることを定款に定める」ことを提案しま
したが、否決されました。後者は要するに女性の取締役候補を出せということ
で、これは本来具体的な取締役候補を立てて提案するのが筋というものですが、
ピエロ(ピエレットか)になってくれる人がいなかったのでしょうか。
 前者が意外にも27%という予想外の支持を集めたということで、日経新聞
が英雄扱いしていましたが、現実には「株主オンブズマン」の活動を見ると、
企業献金や企業不祥事を得意とする政治色の強いもので、資本家の利益や自由
主義経済とは相容れないイデオロギーを持っていますから、表面的な目先の利
害が一致したからと言って日経新聞がこれを賞賛するのはまことにあさはかと
感じざるを得ません。実際、27%とれたのも、ISS(インスティテューシ
ョナル・シェアホルダー・サービシズ)がこの株主提案に賛成を表明したこと
が大きかったわけですが、ISSは株主オンブズマンがイデオロギッシュな政
治運動を行う総会屋まがいのものであるということを良くは知らずに、単に投
資家の利益につながる提案だから賛成としているに過ぎないのではないでしょ
うか。開示させることの目的も、おそらくはそれで株主の利益を増そうという
のではなく、単に「庶民に較べてこの高さ、けしからん」というプロパガンダ
のためではないかと推測されます。
 それは、後者の提案が「女性なら経営手腕が劣っていてもいい」という内容
であり、株主の利益を二の次においていることでも明らかです。この提案が1
7%もの賛成を得たというのは驚くべきことです。
 ソニーは、この件に限らず、障害者雇用率に関しても株主オンブズマンにな
にかと難癖をつけられています。障害者雇用率を達成していないのも女性取締
役がいないのもソニーに限った話ではありませんが、彼らの「大企業悪」と
いうイデオロギーのもとに、ソニーのような世界で愛され、尊敬され、信頼さ
れている企業であっても「その例外ではない」ということを言いたいのでしょ
う。

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