■2002/07/12 (金) 米国型経営への相次ぐ批判

 軽井沢で開催されている社会経済生産性本部の「トップ・マネジメント・セ
ミナー」で、エンロンやワールドコムなど、大型の不祥事が続くアメリカ型の
企業経営モデルに対する批判が相次いだそうです。まあ、いかにチェック機能
を強化し、透明性を高めるといっても、どこかに限界はあるわけで、万全のチ
ェックなどは不可能だということは当然のことでしょう。であれば、現在のア
メリカ企業をとりまく環境に(経営そのものではなく)不祥事への誘因が強い
以上は、どうしても不正は出てくることになるのでしょう。これまでは、長期
にわたる好況でそれが表面化しなかった(不正への誘因が働かなかった)とい
うことに過ぎないのではないでしょうか。一部の論者は、さらにチェック機能
を強化せよと叫んでいますが、根本のところが違っているように思います。
 エイチ・アイ・エスの社外取締役を務める平田雅彦氏(元松下電産副社長)
は、「内部コントロールという土台がなければ、外部役員を招いても砂上の楼
閣となることをエンロンが証明した」と述べたそうですが、まことに正論でし
ょう。氏は「社長の権限から独立した社内監査が重要」という趣旨でこれを述
べたとのことですが、さらに重要なのは、そもそも社長が不正を働いたり暴走
したりしたくならないような環境をつくることではないでしょうか。
 品質不良は検査を強化すれば外部流出は防げます。しかし、それだけでは不
良そのものは減りません。不良を減らすには技能を高めるなどの別の対策が必
要であり、それは企業不祥事にも通じるのではないでしょうか。

■2002/07/11 (木) 労組専従というキャリア

 きのうの東京新聞の夕刊に、労働調査協議会が実施した面白い調査の結果が
出ていました。労組のリーダーの意識調査ですが、「なぜ労組のリーダーにな
ったのか」という問いに対して、「情報が広がり視野が開ける」など、「自分
のためになるから」という回答が多数を占めたのだそうです。具体的な数字は
記事には載っていないのですが、「働く人々のため」とか「社会を良くするた
め」といった、いかにも労働組合らしい回答はごく少数なのだとか。ちなみに
「断る理由がないから」という消極的な理由もかなりあったとか。
 まあ、それが時代の趨勢というものなのかも知れません。実際、労組によっ
ては、企業に在籍のままで労働組合に専従するという労働協約を結んでいると
ころも数多くあります。こういう労組では、労組の中でリーダーになっていく
人のほかはある時期に会社に復帰するのがほとんどで、それと交代で新たな若
い専従者が出てくるというしくみになっているようです。となると、労組専従
というのも、労働界でリーダーとなる一部の人を除けば、サラリーマン生活の
中のキャリアのひとつ、ということになってしまうわけです。
 労組の運動論としてそれがいいかどうかという問題は別としても、はたして
職業人のキャリアとして労組専従が有益かどうかという問題もありそうです。
実際、とりたてて希少な専門性の身につく仕事でもなく、メリットとしてはた
しかに「視野が広がる」とか「人脈の形成」とかいうことが中心になるのでし
ょう。
 もちろん、めったにできない貴重な経験であることも事実で、それをキャリ
アとして生かせるかどうかは結局は本人次第ということになりそうです。

■2002/07/10 (水) 削減続く正社員

 きのうの夕刊に、今年の労働経済白書が紹介されていました。追々しっかり
と読んでみたいと思いますが、今年の白書は今回の景気後退期における失業の
動向について重点的に分析しているようです。
 その特徴をひとことで言えば、今回の雇用調整は、主に男性正社員を削減し、
それを主に女性の非正社員に代替している、というところにあるようです。正
社員は手をつけず、非正社員で雇用調整していた従来のパターンが崩れたとい
うわけです。そのため、失業した正社員がふたたび正社員で就職することが難
しく、かつ正社員での再就職ニーズが高い中高年は企業側の需要は乏しく、し
たがって失業期間が長期化、それも高年齢ほど長期化しているということのよ
うです。
 たしかに、従来であれば、景気後退時には非正規を減らして、回復したらま
た増やしていくというのが普通のパターンでした。今回そのパターンが崩れた
のは、バブル崩壊後の景気回復局面がきわめて力弱くかつ短かったことや、そ
れに先立つ労働時間短縮で時間外労働での弾力性が失われたことから、正社員
にまで雇用調整を及ぼさざるを得なかったという事情と、もうひとつ重要なポ
イントとして、企業が雇用の弾力性を確保するために非正規を増やす方向に走
ったということが原因になっているのではないでしょうか。
 結局のところ、正社員の雇用を安定させるためには、別途景気変動に対する
調整弁を設けざるを得ず、時間外労働の弾力性が低い現状、非正規を増やすこ
とが必要であるということであって、決して企業が正社員の雇用維持を軽視し
始めたということではないと思います。

■2002/07/09 (火) 1900万人!と言われれば驚くが・・・。

 今朝の日経新聞によれば、厚生労働省の雇用政策研究会が、今後5年間で
1900万人の転職が必要だ、という試算をまとめたそうです。日経新聞は鬼の首
を取ったような大見出しでこれを報じています。
 就業者が6000万人ですから、1900万人といえば約3分の1です。今後5年間
に3人に一人が転職というわけですから、「流動化」論に執念深く固執する日
経が大喜びで報道するのもむべなるかなです。
 ところが、この数字にはワナがあります。何かと言えば、今でもすでに毎年
300万人以上が転職しているのです。ということは、5年で1500万人は放って
おいても転職するわけで、追加的に転職するのは400万人で年100万人に満たな
いことになります。
 さらにもう一つワナがあって、300万人なら6000万人の20分の1ですが、は
たして私たちの周囲で本当に毎年20人に一人転職しているという実感があるで
しょうか?ないはずです。それもそのはず、ある一部の人たちは、年に2回も
3回も転職して、それがすべて転職回数としてカウントされるのです。11回転
職したことを自慢げに本にした面白い人もいるくらいです。
 その一方で、新卒就職者は毎年100万人くらいはいるわけですから、実際に
は新卒だけで調整することも理屈の上では可能な、その程度の水準なのです。
 さすがに、これを追いかけたのはゲンダイだかフジだかの夕刊紙だけだった
ようで、要するにそんなレベルの話なのです。

■2002/07/08 (月) 刑務所が足りない!

 今日の読売新聞の社説によると、刑務所や拘置所などの施設の収容率が昨秋、
ついに100%を超えたのだそうです。雑居房の定員を増やしたり、倉庫や集
会場を雑居房に改修するなどの対応策も限界だということで、一部の刑務所は、
スペース対策のために受刑者をこれまでより早く仮釈放することまで検討をは
じめたということです。まことに本末転倒極まりない話で、社説は「日本の治
安にとって、懸念すべき事態」であり「本腰を入れ、対策を考える時だ」と主
張していますが、そのとおりだと思います。
 社説は対策として「何より施設を増やすことが不可欠」と述べています。さ
らに、配置の合理化を前提に、「なお人員が足りない時には、増員を検討する
必要もある」と主張しています。一部には行政がハコモノを作ることに対する
批判がありますが、現実に犯罪の増加と凶悪化の相乗効果で服役者が急増して
いる実態がある以上、ハード面での対応は必要不可欠でしょう。刑務所という
とイメージが悪く、地元にとっては迷惑施設かも知れません(現実に迷惑がか
かることはあまり考えられないのですが)。とはいえ、網走のように観光資源
にしてしまうのは例外としても、社説によれば誘致に前向きな自治体もあると
のことです。また、米国に例があるように、運営を一部民営化するという方法
もあるでしょう。いろいろと知恵は出せるように思います。
 それはそれとして、根本的な問題は施設不足より犯罪の増加ではないでしょ
うか。その大きな原因の一つは警察力の不足にあるわけですから、まずは警察
官の増員、強化などを通じて、治安の改善をはかることが必要でしょう。その
結果として検挙が増えれば、短期的には服役者は増える(中期的には治安の改
善が服役の減少につながるにしても)わけなので、やはり刑務所の増強は必要
です。将来本当に余ったら転用を考えればいいわけで、逆にいえば転用が容易
な設計としておくことが大切かも知れません。
 さらに言えば、犯罪の多発は不況に伴う失業率の上昇と連動しているわけで、
経済運営の失敗や雇用対策の不備に遠因があるとも言えるわけです。そういう
意味でも、適切な経済政策や雇用対策を望みたいものです。


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