■2003/06/30 (月) 雇用情勢と通勤定期券

 土曜日の日経新聞朝刊の「数字で読む流行」というコラムで、通勤定期券の推移と雇用情勢の関連が取り上げられていて、なかなか面白い着眼点だと関心しました。いわく、通勤定期客の動向は90年代初頭までは生産年齢人口に連動していたのに対し、それ以降は常用雇用指数との連動が見られるのだそうです。
 これは、「失業の増大やパートタイマー、フリーターの増加が背景にあるのではないか」ということで、まさにそうではなかろうかと納得できる話です。とりわけ、出勤日数が少なくなればなるほど定期券は割高になるわけで、出勤日の少ないパートタイマーや、複数の勤務先を持つフリーターなどは、定期券のほうが割高になることも間々ありそうです。実際、私鉄の定期券の割引率はそれほど大きくなく、私自身も外回り仕事で直行直帰が多く、本当に定期券が割安なのか疑問に思うことも多々あります。ちなみに脱線しますが、JRの定期券の割引率はずばぬけて大きく、普通運賃だけをみてJRが割高だというのは誤解があると思います。現実にはほとんどの場合会社から交通費が支給されているにもかかわらず、「サラリーマンいじめ」として旧国鉄の定期券の値上げを渋ってきたかつての政治家の判断の誤りがJRの経営の足かせになっているといえましょう。
 話をもとに戻しますと、最近は企業が通勤費を支給しない雇用が増えているということもあるのではないでしょうか。あるいは、実費でなく規定額、あるいは自己申告で支払っているというケースも多いのかもしれません。そうなると、働く人にはできるだけ通勤費を安く上げよう(差額を懐に入れよう)という誘因が働きそうです。
 サラリーマンには切っても切れないものだけに、世相をよく反映しているといえそうです。

■2003/06/24 (火) 首相の給与は高すぎる?

 「幹部公務員の給与に関する有識者懇談会」というのが設置されるのだそうです。その趣旨は、首相をはじめ、閣僚、審議会委員、大使などの給与水準を見直すことだとか。法学者の塩野宏氏が座長で、後藤田正晴氏、奥田碩氏、箱島信一氏など、錚々たる顔ぶれが並んでいます。
 それにしても、「高すぎるとの批判がある」幹部職員、いったいいくらもらっているのでしょうか。新聞記事によれば、首相が月額で225万5千円、閣僚、会計検査院長、人事院総裁が164万4千円、国家公安委員や公正取引委員会委員が事務次官と同等の131万7千円ということなのだそうです。これを12倍すると、それぞれ約2700万円、2000万円、1600万円ということになります。これに、国会議員なら議員歳費が乗る、ということでしょう。期末手当のようなものがどういう扱いになっているのかはわかりませんので、なんともいえない部分もあります。
 これが高いか安いか、なんともいえませんが、たしかに一般庶民(とはなにか?という問題はありますが)と金額だけを単純に比較すれば、たしかに高いでしょう。
 しかし、仕事の内容、負担などを当然考慮に入れなければならないわけで、首相や閣僚の激務を考えると、大企業の取締役クラスで年収約3000万円といわれていることを考えれば一概に高すぎるともいえないような気もしてきます。また、必要な経費がどれほどかという問題がありますし、そのうちどれだけがこの収入のなかから出るのかという問題もあるでしょう。
 むしろ問題なのは、「格」によって給与が決まっていて、仕事によって決まっているのではない、という実態があるのではないか、ということです。審議会の委員などは、ものによってはセレモニアルな会合で、役人の振り付けに従って動けばいい、というものもあるでしょう。こうした仕事の給与が、「格」を理由に高くなっているとしたら問題です。
 いずれにしても、幹部公務員ともなれば、出も入りもいろいろあるでしょうから、その(ごく?)一部である「給与」だけを取り上げて「懇談」することにどれだけの意味があるのかは疑問です。
 ところで、この「有識者懇談会」の給与はいくらなのでしょうか?

■2003/06/23 (月) 人事異動二題

 東京電力は、例年7月に実施している定期異動を、10月に延期することにしたそうです。原発関連の不祥事で夏季の電力不足が心配されていることから、人事異動にともなう混乱を避けるということのようです。
 たしかに、供給不足や停電といったことが本当に起こった場合には、担当者が異動してきたばかりの不慣れな人では、適切な対処は難しいでしょうし、相手先も怒るでしょう。あるいは、節電の依頼といった地道な仕事でも、以前からつきあいのある担当者のほうがやりやすいということはあるでしょうし、また、担当者が変わることで、なにかと情報が伝わらずに不具合があるかもしれません。
 そう考えると、人事異動を延ばすというのは妥当なのでしょう。それとともに、人事異動がいかに不効率をともなうかという事例でもあるように思います。

 その非効率を全社的にやろうというのが、NKKと川崎製鉄の製鉄部門を統合したJFEスチールです。旧2社の技術者を、2005年度までに少なくとも半分以上は異動させるのだとか。
 2005年度といえばあと2年ですから、これはかなりの荒業というべきでしょう。もちろん、人事異動には優れたノウハウを他部署に展開するという意味があるわけですが、統合会社ということを考えると、旧2社の融和や、仕事の進め方、慣習などを徐々に一本化しようというねらいもあるのでしょう。
 すでに管理部門や企画部門では人事交流がかなり進んでいるそうで、なかなか人が動きにくい技術者でもこれだけのことをやるというのは、逆にいえばもともと両社の親和性が高かったということでしょう。鉄鋼は国策として推進された歴史を持ち、新日鉄をリーダーに業界の結束が固いので、社員にしてもライバルと思ういっぽう業界の身内という気持ちもあるのかもしれません。
 

■2003/06/20 (金) 現行ルールの理解促進を意図していたはずなのに

 きのうの朝日新聞に、「解雇ルール 職場どう変化」との見出しで、労使双方の意見を並べた記事が掲載されていますが、その経営者側の言い分を読んで驚倒してしまいました。
 まず、そもそもこの改正は現行ルールの理解促進を意図しているのに、基本的な事実関係がよく理解されていません。たとえば、いきなり「原案は解雇権を明記していたのに削られてしまい残念。それでも経営側からすれば、『合理的理由があれば解雇できる』とも読める」と言っていますが、これは改正の前後で考え方は変わっておらず、行政も労働側も「合理的理由があれば解雇できる」という読み方に違いはありません。また、「これからは、企業も解雇を避ける努力をした記録や証拠を残す必要がある」と言っていますが、これも従来と同じです。あるいは、「従業員5千人の会社と50人のところでは1人の重みが違う」から中小企業に配慮してほしいと要望していますが、これまた、従来から裁判所は企業規模も考慮しながら判断をしてきています(そのような、個別のケースに応じた適切な判断ができなくなる可能性があるから、日本経団連は法制化に反対したのです)。
 それ以上にひどいのが、「ある勤め先でうまく行かなければ、別の企業にさっと転身できる。そんな流動的な社会にしていくべきだ」というのですが、従来でも労働者は「うまく行かない」と思えば退職して「さっと転身」することは自由にできます。もちろん、年金などで不利になるとか、そもそもいまは転身先がないとかいう問題はありますが、解雇ルールとはまったく無関係です。「ある分野で成果を上げられない労働者は、新しい仕事に移った方が前向きだし、その人のためにもなる」といいますが、これは労働者本人の選択で行なわれるべきもので、「そのほうがあなたのためにもなるから解雇します」などというのは理不尽であり、欺瞞以外のなにものでもありません。
 この人、東京商工会議所の幹部なのですが、そもそもどうして日本経団連の専門家ではなく、東商の無知な幹部を起用したのか不思議です。ことによると、日本経団連の人だと労使の違いが出なくて面白くないからかもしれません。そこで、経済産業省の言い分を代弁する東商の人が呼ばれたということでしょうか。まあ、朝日の期待する「経営者=悪者」という構図に一方的にはめ込まれてしまったという意味ではお気の毒ではありますが。

■2003/06/19 (木) 正当な内部告発で解雇は無効

 きのう、大阪地裁堺支部で、内部告発者の解雇を無効とする判決が出ました。このところ、エンロンや東電など、内部告発による大物企業不祥事の発覚が相次いだことから、内部告発者の保護の問題が注目を集め、立法化も進んでいます。こうしたなかで、おおいに関心を呼ぶ判決であると思います。
 これまでも、十分判例が蓄積されているとまではいえないまでも、内部告発を理由とする懲戒解雇が無効とされた例はありますが、今回の判決では、内部告発が正当であるかどうかの判断基準として「内部告発の根幹部分が真実か真実と信じる理由がある」「目的が公益性を有する」「内容が組織において重要」という点をあげているそうです。従来の判決には、「内部でその状態を改善する努力を行なったものの、外部への告発以外に方法がなかった」ということを判断基準としている例もありましたし、今般の内部告発保護法案が対象となる内部後発の内容をかなり限定していることなどと比較しても、いささか基準が緩やかになっているように感じます。
 まあ、今回内部告発された行為はかなり悪質なものであるうえ、内部にこうした問題の処理のしくみがないなど体制的にも不備があり、さらに問答無用で懲戒解雇するなど手続きにも問題があるようですから、これでは不正を止めるためには内部告発もやむなしという感はあります。
 とはいえ、内部告発が何でも保護されるということになると、いわれのない中傷や誹謗が乱発される懸念もあります。「公益性を有する」「組織において重要」という基準も、今回のように明らかなケースはともかく、場合によってはあいまいで判断に困ることも出てきそうです。
 企業としては、内部告発につながるような行為を行なわないことが第一であり、風通しのよい風土をつくることが大切ですが、それでも誹謗中傷は人間の組織であればつきものですから、こうしたものを内部できちんと処理できるようなしくみを整備することが重要でしょう。
 そういう意味では、企業の体制整備を促すためにも、今回の法案では見送られた内部処理前置が必要ではないかと思います。

■2003/06/18 (水) 子を射んとすればまず親から?

 高卒の就職が非常に厳しいなかで、厚生労働省は高校生の親を対象としたセミナーを開催することにしたそうです。親が「いやな仕事に無理に就職することはない」と「理解ある態度」を示すことが、無業者やフリーターの増加につながっている、という問題意識によるものだそうです。なかには、親の方が先にあきらめてしまい、学生が就職活動に取り組めなくなってしまうというケースもあるのだとか。
 そこで、親を集めて雇用失業情勢や就職戦線の現状を説明し、さらにはフリーターの問題点や、若年からのキャリア形成の重要性などを訴えようということのようです。
 親がこうした「理解ある姿勢」を示すのは、必ずしも単に甘やかしているとか、関心がないとかいう場合だけではなく、できれば進学してほしいとか、もっと勉強して少しでもいい仕事についてほしいとかいった親心が背景にある場合も多いでしょう。そういう親に対して、現状を正確・冷静に認識させて、甘い期待を断たせるという点では、たしかに意味があるかもしれません。ただし、それで親がその気になっても、子にその気がなければ効果は限られるわけですが、親子ともその気がないよりははるかにマシだろうと思います。
 いっぽうで、単に甘いだけとか、逆に無関心だという親がどれほどいるのかわかりませんが、そういう人に対しては効果は落ちるでしょうし、そもそもそういう親がこのセミナーに出てくるのかどうかも疑問で、まずはいかに親を引っ張り出すかが知恵の使いどころになりそうです。
 また、就職指導教諭のいうことをきかない親が、いかに権威があるとはいえ、役人や学者の話に耳を傾け、説得されるかどうかというと、いささか疑問もなしとはしません。
 そういう意味では、「話をきいてみたいな」と思わせるような講師を呼ぶことが、集客?と説得の両面で重要課題になりそうです。もっとも、タレントやスポーツ選手をまねき、最後には抽選会、といった企画でいいのか、いいとしてもそれがはたして厚生労働省にできるかどうか。これまた、やはり民間の知恵を使うことを考えたほうがよさそうです。

■2003/06/17 (火) 労組法改正に期待する

 6月13日の日経新聞夕刊によれば、厚生労働省は不当労働行為にかかる労使紛争の早期解決をはかるための労組法改正を検討しているそうです。現状、たしかに労働委員会での救済手続きは時間がかかりますし、また、解雇や降格、賃下げなどの個別紛争を、事後的に一般労組に加入→団交申し入れ・拒否で不当労働行為案件として労委に持ち込むといった本来の趣旨に鑑みて疑問のあるケースも多々見られます。改善の必要性は大きいといえましょう。
 具体的には、現状では位置づけが不明確な和解について法律で明文化するとともに、一定期間経過したら救済の審査に移行するなど計画的な処理を進めることとするといったことが検討されているそうです。これらに加えて、事件の本質が個別紛争である場合には、個別紛争処理の手続きに移行させるしくみもできればよいと思います。中間に入っているスジの悪い労組が話をいたずらに混乱させていて、彼らを取り除けば当事者同士で改めて話し合いができるケースも多いのではないかと想像するからです。
 7月末には厚労省の研究会から報告が出るそうなので、注目して待ちたいと思います。

■2003/06/16 (月) 本日の小ネタ

 国民生活金融公庫総研の調査によると、新規開業者の年間労働時間は約3200時間で、一般労働者の1.5倍にものぼることが明らかになったそうです。収入も、過半数が開業以前を下回り、2割強の人は事業収入だけでは生活できない状況とか。
 それでも、仕事のやりがいや満足感については全体の8割以上が「同世代のサラリーマンより良い」としているのだそうです。多くの人はそれを求めて開業したのでしょうし、だからこそ長時間労働も辞さずということなのでしょう。いっぽうで、そう思わなければどうしようもない、という人もいくらかはいると思いますが、どのくらいいるのでしょうか。
 いずれにしても、経済産業省などが安易に「若者による企業の促進」などと言っていることがいかに能天気かということを改めて感じさせるデータです。

 道路公団で、民営化委員会事務局を務めるなどして「改革派」と目されている職員が、地方転勤など露骨な左遷人事にあいましたが、これに対して公団内部で反対運動が起きているそうです。若手を中心に署名が集められ、左遷人事の撤回を求める要請書を提出したほか、改革志向の委員会の設立が進んでいるとか。
 このような左遷人事は組織の士気をいちじるしく殺ぐことは常識ですが、それにしてもここまで話が大きくなるということは、よほど理不尽な人事だったのでしょう。公団トップとすれば、組織を危うくする人間を飛ばすことでみんなが安心できるという理屈かもしれませんが、長い目で見ればむしろ理不尽な人事のほうが組織の存続を危うくすると考えるべきでしょうし、多くの人にとっては自分もいつ理不尽な左遷にあうかもわからない、という方がよほど安心できないでしょう。
 公団トップもかなりの批判は覚悟していたでしょうから、単なる保身でもないのかもしれません。それほどまでに許せなかったということでしょうか。しかし、人事を報復の道具にすることはあまりにリスクが大きいということを知ってほしかったと思います。

 読売新聞に、日本の住宅が高いのは零細な工務店が多く、大手プレハブメーカーが工務店をつぶさない程度の価格設定で利益を確保しているからだ、という記事が出ていました。ものが住宅ともなると、商店街の八百屋がスーパーの進出でつぶれるような単純なことは起こらないということなのでしょうか。ちょっと不思議です。

■2003/06/10 (火) フィリップス曲線

 月1回ペースでは日誌の名が泣きますが、とにかく書いておかないと忘れてしまいそうなので書きます。先週木曜日の日経経済教室の新実一正氏の論考は非常に興味深く有用なものだったと思います。


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