■2003/07/30 (水) 殺人未遂でもいいくらい

 愛知県で通行人が放し飼いの犬に噛まれて重傷を負った事件で、名古屋地裁は飼い主に傷害罪を適用し、懲役三年執行猶予五年の有罪判決を出したそうです。ふつうは起訴するにしても過失傷害でしょうから、これは異例の判決といえそうです。
 まあ、この事件の場合は犬がいわゆる闘犬で、被害者が襲われたときにも飼い主は放置、取り調べに対しても「金で解決すればいい」などと供述したということですから、これはさすがに傷害罪に問われて当然という感のある悪質ぶりです。
 先日も、はねたと知りながらひきずって逃げたという悪質なひき逃げ犯が殺人で起訴されていましたが、今回のケースも殺人未遂でもいいくらいという感じすらします。
 厳罰化がすべていいというわけではありませんが、飲酒運転の例をみてもやはり抑止に一定の効果もありそうですし、機械的に罪をあてはめるのではなく、実情をみて個別適切に判断して、悪質なケースには厳格に臨んでほしいものです。
 それにしても、負傷させても金を払えばいい、という言い分にも背筋が寒くなるような気がします。しかも60歳をこえた高齢者だとか。こういう事件がまれな例外であってほしいのですが。
 

■2003/07/29 (火) しょせんは経産省の省益追求

 きょうの毎日新聞の社説、「若者に仕事を 省益を排し政府一体でやれ」は、先日の文科・厚労・経産および内閣府による「若者自立・挑戦プラン」とりあげおり、なかなか面白いものがあります。言いたいことは、政策の内容というよりは役所の連携の悪さのようです。
 まず、このプランについて「現実には各省バラバラでやってきた。その意味では、4府省が足並みをそろえたことは一歩前進と評価できる。」と前向きに評価します。それに続いて、「その後がいけない。プランを具体化する作業が始まった途端、省益が顔を出した。対策の方向性や予算獲得をめぐりぎくしゃくが続き、スタートから迷走気味だ。」と指摘します。
 具体的には、「財務省との調整がつかず、どれだけの予算で何人の雇用を生み出すのか、という具体的な目標数値も盛り込めなかった。」といいます。財務省がケシカラン、というわけです。
 続けて、「ジョブカフェを提案した経産省は運営を民間企業に委託して、若者の就職実績に応じて報酬を支払う仕組みを描いていた。」が、「厚労省はこれに反対している。ハローワーク中心の支援が念頭にあるからだ。」といいます。今度は厚労省がケシカラン、というわけです。
 さらに、「民間に委託すれば…1人あたり約100万円かかる…が、ハローワークだと1人平均で5〜7万円という。」と厚労省の主張にも一定の配慮をし、「経産省が厚労省の雇用対策予算にまで手をのばすのでは、との警戒感がある。」と述べています。経産省もケシカラン、というわけです。
 そして、「本気でやるとするならば、予算についても各省の一般会計とは切り離し、特別枠で実行するくらいの構えが必要だ。」「各府省は省益を排し、政府が一体となって取り組んでもらいたい。」などと主張しています。
 もともと、このプランはまさに経産省が他の省の予算を分捕ろうという省益そのもののようなものなので、こうなることは目に見えていましたし、内容もよくありません。社説もいうとおり、「経産省の仕事は若年者の雇用の場を企業に作ってもらうことではないのか」ということなのです。厚労省だけでなく、文科省も同じでしょう。私もまったくそのとおりと思います。

■2003/07/28 (月) 退職金カットで退職促進?

 先週金曜日の読売新聞朝刊に、三井生命保険が役員の退職慰労金を25%、総合職社員の退職金・年金を15%削減することで労組と合意したとの記事が掲載されていました。三井生命はこの5月末に、来年4月に株式会社に転換することを中心とした中期経営計画を策定しており、その中に「退職金・年金の支給水準の引き下げ」も含まれていました。この段階では具体的な内容までは公表されていませんでしたが、それが今回労組と合意して明らかになったということのようです。
 具体的な内容をみると、対象は10月以降に退職する役員と総合職社員で、今後は現行退職金・年金制度を廃止し、退職金前払制度を導入する方針とのことですから、単純な減額ではないようで、おそらく退職金前払分をいったん賃金として支払い、その中から退職時と退職後に受け取る一時金と年金を積み立てるということになるのでしょう。一種の確定拠出年金のようなものではないかと想像されますが、税がどうなるかなど、制度の細部設計が興味深いところで、いずれ具体的な紹介を期待したいものです。
 さて、この制度変更をどうみるかですが、記事にも「リストラを進めることで、財務体質の強化を図る狙いがある」となっているように、退職給付債務の解消がおもな趣旨であるものと思われます。松下電器などが退職金前払制度を導入したときには、「必ずしも長期勤続を希望しない優秀な人材を獲得する」といった人材戦略的な意図があったわけですが、これにはそうした趣旨はなさそうです。
 むしろ、中期経営計画を見ると、来年3月末までに総合職社員を700人削減して2100人にスリム化する、となっています。これは陣容を4分の3にするということですから、自然減ではとても対応できないでしょう。まあ、こうした数字はめいっぱい大きく発表されるのが最近では普通という感もあり、営業職への転換や出向などによる減も含まれてはいるでしょうが、それでも相当数の退職者を出す必要があるはずです。その際に、当然特損を計上して相当額の割増退職金などを出すことになるでしょう。今回の制度変更は、「いま退職すれば退職金は現行制度で満額支給、残れば15%カット」ということになるわけですから、特損を出さずに事実上の割増退職金の上積みにもなることになります。
 まことに涙ぐましいリストラですが、それほどまでに生保経営は苦境にあるということなのでしょう。

■2003/07/22 (火) 中央省庁のインチキ手当

 日曜の読売新聞の記事によれば、人事院の調査で、中央省庁で職員を短期間大都市圏に異動させ、その後さらに地方へ異動させることによって、「調整手当」を事実上水増し受給させていたことがわかったそうです。これは大都市圏の高物価への配慮ということで、東京23区では12%の割増にといいますからかなりのものです。
 本来、地方転勤とともに打ち切られるべきものですが、激変緩和措置として3年間は従前と同様に支給されるとされています。したがって、たとえば花巻から松江(地名には他意はありません)へ転勤する際に、短期間だけ東京の本省に在籍させて花巻→東京→松江という形にすれば、東京勤務で調整手当受給資格が発生し、その後3年間は松江でその手当が引き続き受給できるわけです。
 甚だしい例として、文部科学省では、1日だけの本省勤務で12%の受給資格を与えていたそうで、同省は「いったん本省に戻さないと、人事権の主体がわからなくなる。『本省から忘れられる』という職員の不安にも配慮している」と説明しているそうですが、まさに論外というべき詭弁でしょう。1日でも本省異動すれば人事権の主体がわかるとか、本省の記憶にとどまるという理屈自体が噴飯ものですが、仮にそうだとしても手当の受給資格を発生させないのが常識というものでしょう。
 それに対し、那覇市への異動者43人を1週間名古屋市に移動させて10%の手当を上乗せさせた海上保安庁の説明はやや切実で、「沖縄勤務の希望者が少ないため、待遇を厚くした」というものです。まあ、民間企業からすればこれでも甘いというところかもしれませんが、海外駐在などで、生活環境の良くない地域への赴任には手当を上乗せすることは民間企業でもよくみられることです。本来なら、堂々と沖縄手当のような形で待遇を改善すればいいわけですが、そこが法律に縛られたお役所の悲しさなのでしょう。あからさまに沖縄が不人気ということを認めることは沖縄への配慮としてできない、という配慮も、とりわけ海上保安庁ではあるのかもしれません。読売新聞の記事も、文科省の説明には「言い訳」という言葉を使っているのに対し、海上保安庁の説明には「釈明」という言葉が使われています。
 露骨に言えば、大都市圏≒栄転、地方≒不人気という図式が定着しているなかで、はたして生計費だけに着目した手当が必要なのか。根本的な見直しが必要なのではないでしょうか。

■2003/07/21 (月) 海の日

 7月21日は「海の日」のため、「吐息の日々」はお休みをいただきます。

 「ハッピーマンデー」第2弾で、今年から「海の日」は7月第3月曜日とされました。これでハッピーマンデーが年4回、加えて他の祝日も日曜と重なれば月曜休み。月曜の休日が増えすぎて、学校の時間割がおかしくなる(月曜日に設定された科目の時間数が少なくなる)という弊害も出ているのだとか。いつまでも「一斉に休まなければ休めない」というのも淋しい話だと思うのですが・・・。

■2003/07/18 (金) 労組がつくった自殺かも

 きのう、岩手県釜石市の小学校教諭の自殺の労災(公務災害)認定をめぐる訴訟で、最高裁が公務災害を否定する判決を出したそうです。
 この事件は、1983年に当時29歳の小学校教諭が「学校の仕事にいささか疲れた」との書き置きを残して県内の山林で自殺した、というものです。
 地裁では「過重業務でうつ病となり自殺」として公務上との判断がありましたが、その際に判決は「自己の教育理念に合わない道徳の公開授業などを準備させられた」ことで「公務は強度の心理的負荷を与えた」のですが、高裁では「悩んだり周囲に相談したりした形跡がない」「軽度のうつ病だった可能性はあるが、組合活動での悩みなど、公務以外の事情による可能性も否定できない」として公務外と判断しました。この判断を最高裁も支持した、ということのようです。
 「自己の教育理念に合わない道徳の授業」というのは、学校が「この子は良い子、悪い子、普通の子のどれでしょう」などと考えさせて児童の価値意識を高める指導方針を採用していたのに対し、この教諭は「子どもたちの差別につながる」と反発していたということのようです。高裁判決が「組合活動での悩みなど、公務以外の事情による可能性」といっていることから、背景には道徳授業に対する教員の労組のイデオロギッシュな反対方針があったものと思われます。悩みの多くはこの不毛な板挟みに起因するものだったのではないでしょうか。まことに気の毒な状況には違いないわけですが、そうであれば公務に起因するとはいえないとの判決は妥当だろうと思います。
 この訴訟では、労組も遺族を積極的に支援していたようですが、これは労働運動もさることながら、自らの責任を逃れるという意図もあったのではないかと想像されます。
 仕事は多かれ少なかれストレスをともなうものですし、仕事が健康に影響しないということも常識的には考えられません。このところの労災をめぐる判断を見ていると、そのうち、休日に落雷で死亡した、というようなよほど明確に仕事が無関係とわかるケースを除けば、雇用者の負傷・疾病はすべて労災だということになりかねないのではないかと思っていましたが、さすがに一定の限度はあるということのようです。

■2003/07/17 (木) オープンな議論を

 UIゼンセン同盟の高木会長がこの10月に行なわれる連合会長選挙に出馬することを表明したことを受けて、去就が注目されていた笹森現連合会長ですが、先日再選をめざして出馬する考えを明らかにしました。まあ、笹森氏はまだ1期2年で、これまでの連合会長はみんな2期4年務めていますから、続投出馬は順当なところです。これで今回は選挙になる可能性が高いとの下馬評です。
 新聞報道によると選挙になるのは97年以来6年ぶりとのことですが、97年は鷲尾悦也氏と得本輝人氏の両巨頭が出馬を表明したものの、事前の調整で得本氏が辞退して鷲尾氏に一本化。JR総連が柴田光治氏をたてて一応選挙にはなったものの、事実上の信認投票という結果でした。その点、高木氏は最大単産であるゼンセン同盟の会長ですから、もし今回一本化されずに選挙になれば、連合発足以来の本格的な選挙ということになるわけです。
 そもそも、連合の役員選挙というのは「役員推薦委員会」なるもので事前に候補者を一本化するという、自民党も顔負けの密室談合人事で、およそ不透明な代物です。97年も、鷲尾氏への一本化がはかられるなかで、得本氏が「組合運動のあり方をオープンに議論する場があってしかるべきだ」と主張して立候補を表明しました。今回も高木氏は「公の場で政策論争をしたい」と開かれた議論を提唱しています。
 97年は、結局得本氏が意見書を提出、そのいくつかが運動方針に取り入れられるなどしたということで得本氏が辞退しました。今回も調整がはかられるでしょうし、高木氏の立候補は次回をにらんだものという説もあり、どのような経緯をたどるか予想できませんが、時代の趨勢の中で連合も新たな運動の構築が求められているいま、密室人事ではなく、公開の場での議論が行なわれることは歓迎すべきことでしょう。双方の政策がどうかは別としても、この点では高木氏の挑戦は多とすべきではないでしょうか。

■2003/07/16 (水) 年金スライドのお手盛りを解消せよ

 各報道などによると、昨年に続いて、年金の物価スライドをどのように実施するかが議論になっているようです。もともと年金の物価スライドは、インフレで物価が上昇したときに年金生活者の生活水準が低下することを避けることを主眼においたもので、物価の下落はあまり考慮に入れられていませんでした。 ところが、99年以降消費者物価指数が下落に転じたため、ルールどおりであればその分年金も下方スライド=減額すべきだったところを、「景気に配慮」などといった理屈で、00年、01年と3年にわたって凍結してきました。引き下げても実質的な生活水準は維持されるわけなので、スジからすれば引き下げるべきだったわけですが、年金受給者の反発を恐れてか、凍結が続けられてきました。その結果、凍結分は実に1.7%にものぼっています。
 02年については、03年予算で物価下落分の下方スライド(0.9%)が実施されましたが、03年も0.4%の物価下落が見込まれるなか、04年度予算の扱いをどうするか、が議論されているという図式のようです。
 財務省はもちろん、財政状況や年金財政の今後を考えれば過去の凍結分もあわせて下方スライドすべきと主張しています。これに対して、厚生労働省は、さすがに凍結まではいわないものの、昨年同様、03年の物価下落分のスライドのみにとどめたい意向のようです。
 これはそもそも、99年に政治的意図から引き下げを凍結したのが間違いの始まりといえるでしょう。その当時は、物価下落が翌年も続くことはないだろうという甘い見通しのもとに、「今年かぎりなら」ということで安易なお手盛り凍結に走ったのでしょうが、これが5年連続ともなると、お手盛りも続かなくなるのが当然です。
 もちろん、景気への配慮が必要な情勢であることは間違いありません。しかし、それを年金受給者だけに限って実施する理由は見当たりません。また、こうした恣意的な運用が行なわれることは、深刻化する年金不安、年金不信をさらに増幅することにならないでしょうか。
 まあ、物価上昇局面になったら段階的に解消、というシナリオを考えているのかもしれませんが、結局その場にくれば段階的解消も政治的に難しくなることは目に見えています。しょせん、一回解消してしまえばそれですむ話なのですから、ここはきちんと筋を通すのが正解であるような気がします。

■2003/07/15 (火) UFJ銀行の勇気ある決断

 UFJ銀行は15日までに、都内の72支店で、ヤミ金業者が利用していたとみられる銀行口座を強制解約したそうです。「偽造の疑いが強い健康保険証を本人確認に使って開設された」との理由で、架空名義などの口座を強制解約できるよう定めた預金規定に基づいての処置とのこと。
 都内の複数の支店には、「なぜ使えなくなったんだ」「殺すぞ」などの脅迫めいた電話が計約20件あったそうですから、いずれまともでない筋のものには違いありません。まことに勇気ある処置であり、率直に賛辞を呈したいと思います。
 ヤミ金だけではなく、架空口座を使ったマネー・ロンダリングなども問題になっていることもあり、もとより架空口座を放置していたことこそ問題だというのも正論でしょうが、それは意地悪というものでしょう。やはり素直に賞賛すべきと思います。うん、これならある程度賃金が高くてもいいと思います(笑)。いっぽうで、繁華街ではヤミ金業者が次々と客の入金を引き出して長時間ATMを占拠していることへの苦情もあったということで、銀行としても不都合な事態ではあったのでしょう。
 なんでも、このところフリーターの若者などに貸金業者の登録をさせ、その登録名義を使って営業するヤミ金もあるのだとか。前科持ちは貸金業者登録ができないことからこうした手口が使われるのだそうですが、長引く景気低迷で荒廃した世相を反映した話のように思います。
 いずれにしても、勇気を持って違法業者に対抗した銀行の決断は繰り返しの賞賛に値すると思いますし、治安当局は関係者の安全をしっかり確保してほしいものだと思います。

■2003/07/14 (月) 世界一の長寿国

 日本人の平均寿命が発表され、女性は85.23歳、男性は78.32歳となり、それぞれ世界一の長寿であるとの報道がされていました(男性については香港の方が長寿との報道もあるようです)。
 平均寿命というのは、その国の総合評価として有意義なものだろうと思います。経済的な豊かさのみならず、環境、保健や衛生、栄養の水準や、治安の程度などをトータルで反映したものだろうと思うからです。
 しかし、残念ながら、昨今の世の中では、これも手放しで喜べないのが現実でもあります。高齢化による活力の衰退や、社会保障の破たんなど、これにまつわる暗い話題も多いからです。やはり報道によれば、悪性新生物、心疾患、脳血管障害の三大死因を克服すれば、平均寿命が女性93歳、87歳にまで延びるのだそうです。これが実現したらすばらしいことですが、しかし、そのための高度医療にかかるコストを考えると、医療費をどうするのかという心配もついついしてしまいます。
 国民が長生きであることを喜べない国があるというのは、ふつうに考えればおかしな話だと思うのですが、人間社会というのはそうそう簡単にはいかないもののようです。
 どうしたらいいのでしょう。長生きの国なのに国民が子孫をたくさん残したがらない国でもあるという矛盾に、ヒントはないのでしょうか。


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