|
■2004/03/26 (金) 自分に甘く、他人に辛く 少し前の朝日新聞によれば、厚生労働省が雇用対策の実効性を示す数値目標を導入するそうです。具体的には、ハローワークで求職活動した人の3割を就職させるとかいったものです。 もっとも、現状でも26.7%(2002年実績)だというのですから、民間企業の感覚からすればおよそ意欲的な目標とはいえません。早期再就職者の比率に至っては、実績11%に対して目標12%というのですから驚きます。これでは数値目標の体をなさず、むしろ成果主義の弊害として繰り返し指摘される「低い目標を設定して達成率を高めようとする」典型的な事例にみえます。もう少しチャレンジ精神を持ってほしいものです。記事で紹介された職業訓練施設修了者の就職率目標も同じで、68%を75%とか、53%を60%とか、ずいぶん「現実的」なものになっています。 いっぽうで、年齢不問求人の比率については、17%を2倍近い30%に高めるという意欲的な目標を掲げています。意欲的なのはいいのですが、これは要するに企業が出してくる求人票に年齢制限があったら、極端なことをいえば受け付けないとか(まあ、いまどき求人はのどから手が出るでしょうから、これはこれで度胸は要りますが)、企業に執拗に「指導」すれば数字を上げることができそうだから、ということなのでしょう。 まあお役所の宿命みたいなものかも知れませんが、達成ありきの目標設定では意味がないでしょう。その一方で企業には育児休業取得率などで非常に意欲的なチャレンジ目標を設定させようとしているわけですから、まったくもって勘弁してくれという感じです。 ■2004/03/25 (木) エコノミストはこう思っている 時事通信によると、全米企業エコノミスト協会が会員エコノミストを対象に調査を実施したところ、自由貿易によって「雇用に悪影響は出ていない」との答えが60%に達し、「多大な影響がある」との回答(9%)を大きく上回ったそうです。残り31%は「影響はあるが、ごくわずかだ」との回答とのこと。 また、米政府のドル政策に対しては、ドル安政策を求めた回答者は18%に過ぎず、31%が「強いドル政策」が望ましいと回答、51%は「米政府はドルに関する政策を持たず、為替相場の決定を市場に任せるべきだ」と答えたとのことです。 まあ、エコノミストが雇用への影響といえば国民経済全体での話でしょうから、個別には多大な影響を受けているセクターもあり、そこから強硬な保護主義的主張が出てくるわけで、この結果をみて、米国が保護貿易的にはならないと楽観することもできないのでしょう。「エコノミストはこう思っている」という程度に見ておいて、これが事実を表しているとか、重要な含意があるとは考えないほうがいいのだろうと思います。 そう考えると、むしろ、自由貿易主義者がほとんどと思われる米国のエコノミストですから、1割くらいはグローバル化で雇用に大きな影響があると考えており、2割近くはドル安誘導を望んでいるというのは、かなり高い数字と見るべきなのかもしれません。 ■2004/03/24 (水) 就職難で学生の自殺が増加 本日の読売新聞によれば、大学生協連の調査によると、厳しい就職事情を苦にしたとみられる大学生の自殺が増えているのだそうです。 これは調査というよりは共済の給付実績で、90年代前半は年間50件程度だった自殺に対する共済給付が99、2000年度は各99件に激増、以降も80件台で推移しており、今年(2月まで)は死亡の48%を自殺が占めているとか。自殺理由は実際にはわからないわけですが、今年は1年生の自殺が1件に対し4年以上が44件といいますから、これはたしかに就職を苦にした自殺が多いということが推測されます。 現実をみれば、就職が不調に終わったとしても、それなりに「フリーター」などでそこそこやっていく、という人はもはや普通の存在になりつつあるわけで、職がなくて路頭に迷って死ぬしかない、という追い詰められ方をしているわけではなさそうに思えます。おそらくは、それまでの人生を格段の挫折もなく問題意識もなく生きてきた学生が、あまりに厳しい就活の現実に直面したことによるショック、というのが大きいのではないでしょうか。実際、現実の就活では、次々と書類や1次で落とされ続けると、自分自身の存在そのものを根本的に否定されているかのような感覚に襲われるといいます。それに耐えかねて鬱状態になり、ついには自殺に至るというケースが多いのではないでしょうか。 であれば、それなりに対策も見えてくるわけで、あらかじめ就活の厳しさをしっかり教え込む、不調が続いても不調仲間で連絡が取りあえる場を作ってひとりにさせない、といったことが考えられると思います。 いっぽうで、大学の先生に聞くと、この試練の時期に学生は人間的に大きく成長するともいいます。依然として新卒就職は極めて厳しい状況ですが、若干の明るさもみえてきています。学生諸君にはぜひこの試練をタフに乗り切ってほしいものです。 ■2004/03/23 (火) 売って初めて技術が輝く 本日も、またしても「働くということ」批判です(笑)。昨日は週末の記事を取り上げたので、今日は昨日の記事を。お題は「プロを貫く――こだわる中に充足感」ということだそうで、はっきり言って毎日同じような話題ばかりで食傷しますが、こういう話が好きな人も多いのでしょうね。 で、実は私も好きな話題がときどきあって、たとえば今日の出光興産の事例はなかなかいい。研究畑一筋で優秀な研究者とされてきた人が、リストラの中で有望な新規分野の営業課長に配転された、という話です。「技術開発の苦労が分かるからこそ、事業化にも力がこもる」。ということで、「取引先とぎりぎりの交渉を重ね、社内では製造部門にコスト削減も提案する。『おれたちが売って、初めて技術が輝く』。戸惑いながらもプロの営業マンを目指し走り続ける。」ということだそうです。実にいい話だと思います。 これは本当にいい話です(くどいな)が、私がいいたいことはおわかりでしょう。「おれたちが売って、初めて技術が輝く。」そのとおりです。で、私としてはぜひ、日経のこれまでの特許対価訴訟の巨額判決に対するスタンスと矛盾のない説明をお聞かせ願いたいのです。 なお、本日の最終回はなかなかいいと思います。ここで書かれた事例は、それなりに会社組織の中で「普通に」働いている人で、多くの人にとって現実的な存在です。記事は「今を懸命に生き抜く個人の奮闘の積み重ねが、日本経済に新たな風を吹き込んでくれる。」といいますが、このように、会社組織のなかで地道にまじめに働く、無数の無名の人たちの「個人の奮闘の積み重ね」から、いつしか新たな風が出てくるのだと思います。新しい働き方でなければ新しい風が吹かないという思い込みは事実に反する、オカルトにしかすぎないのではないでしょうか。 ■2004/03/22 (月) 弁護士安泰けしからん、じゃなかったの?? 今日もまた「働くということ」批判です(笑)。つまらないことと思われるかもしれませんが、どうにも気になることをひとつ。 週末、土曜日の「働くということ」で、司法試験に合格したタクシー運転手の事例が出ていました。タクシーの運転席に仮設した簡易机で勉強する姿の写真もあります。高卒の学歴ながら働きながらコツコツと勉強をし、最難関の司法試験に合格したというのは、私たちを大いに励ましてくれる話であり、報道するに値する話題といえましょう。 ただ、これを「働くということ」の事例にあげ、「文句も言わず支えてくれた妻に報いたい。『転勤で迷惑をかけずに済む弁護士がいいかな』。」とまで書かれてしまうと、おいおいという感じになってきます。しかも、ごていねいにそれに続けて「終身雇用など旧来秩序が揺らぐ時代。」とまで云っています。 なにを言いたいかというと、「転勤で迷惑をかけずに済む弁護士」というのは、まさに日経新聞が「働くということ」も含めて全力で叩き続けている「終身雇用など旧来秩序」の代表選手ではないか、ということです。法曹人口が足りない足りないといいながら、「最難関の司法試験」で強烈な参入規制を行い、身の安泰をはかっている弁護士に対して、日経はきわめて批判的だったはずです。 考えてもみれば、この運転手氏が法曹ではなく大企業のサラリーマンへの転職に成功し、これで家族に迷惑をかけなくてすむ、安泰だ、という話であれば、おそらく日経は見向きもしなかったはず。やっぱり、日経新聞さんなんかおかしい。 |