■2004/06/18 (金) パートタイマーの正社員登用

 今日の日経朝刊「新会社論・終わりなき賃金改革」では、パートタイマーの登用がとりあげられています。スーパーをはじめとする小売業界ではいまやパートタイマーが現場の大多数をしめ、主力になっていますから、当然ながらその育成や活用が経営上の重要な関心事項になっています。したがって、今回紹介されているようなフルタイム(正社員)への登用(イオンの事例)や、処遇・評価の改善(マルエツの事例)といったことも当然出てくるでしょう。
 これは要するに、パートが主力になるようになってからそれなりの歳月が流れたことで、パートの中にも相当の能力や経験を蓄積することが出てきたことの自然な現れといえましょう。いっぽうでは、パートが周辺・補助的な位置付けにとどまり、賃金は一律、評価もしないといった、「なるべくパートの管理には手間をかけない」ことが経営上合理的だ、という業種・企業も依然としてあるわけで、イオンやマルエツの事例はたしかにこれまでの感覚からすれば珍しいかもしれませんが、それほど大騒ぎするほどのことではないのではないかという気がします(もちろん、長年地道にパートで経験を積んできた人が、努力して試験を受けて正社員登用される、というのは人々をおおいに元気づける話であり、その意味においてはニュースとしての価値はあると思います)。
 人事管理の側面からこれらの事例が重要なのは、登用されること自体ではなく、いつ、何人、どういう人を、誰を登用するのかは会社が判断することだ、という点でしょう。これはあくまで会社の人事施策であり、外部の第三者が口をさしはさむべきことではありません。たとえ、あらゆる面で正社員とまったく同じようにみえるパートがいたとしても、そのパートが「正社員にしてくれないなら退職します」といったときに、会社として「それなら残念だが退職させるしかない」と判断するのであれば、それは「まったく同じ」ではないのです。
 したがって、行政が指針で「働き方が同じなら賃金決定方法を合わせる」などと記述するのは、まことにもって余計なお世話であり、見当違いもはなはだしい愚挙であるといえましょう。

■2004/06/17 (木) 記事を書くなら勉強しよう

 今朝から、日経新聞の連載コラム「新会社論」で「終わりなき賃金改革」というシリーズがはじまりました。初回のきょうは、日産、松下、武田薬品といった優良企業の賃金制度を取り上げ、「年功的に昇給する制度を廃止」し、「能力や実績などだけで賃金が決まる制度」になって、「大過なく過ごす人生は今は昔」と述べています。
 これがまた、中身がどうこうと言う前に、相も変わらず不勉強な記事で笑えます。
 まず単純なものからいきますと、武田薬品の賃金制度について「仕事の責任の重さや業績だけで賃金が決まる完全職務給」という珍妙な記述があります。完全職務給という以上は、業績やらなにやらにかかわらず、完全に職務だけで賃金が決まるものであるはずで、「業績だけで決まる完全職務給」などというのは矛盾であり論外です。武田薬品の資料にそう書いてあったのだとすれば、それはおそらくインチキなコンサルに適当に作らせた資料だったのでしょう。
 次に、いまだに賃金の「決め方」と「上がり方」を区別して考える、という基本中の基本がわかっていません。いくら制度的に年齢給や勤続給をなくしたとしても、結果として決まってくる賃金はやはり勤続につれて上がるのがむしろ普通であり、今回登場の三社もおそらくそうでしょう。「最低限の安心感は保証する」というとき、その最低限は例外中の例外というのが通常です。
 もう一つ、「社員の優勝劣敗をはっきりさせた方が会社の活力につながる」というのは、まさか三社のどなたかが本当にそう言ったのではないでしょうね。三社のようなしっかりした企業の人事部であれば、「劣敗をはっきりさせる」ことが組織のモチベーションに甚大な悪影響を与えることは重々承知のはずで、各社とも「優勝をたくさん出す」とともに「劣敗をなるべく出さない」ための動機づけや底上げの取り組みをしっかりやっているはずです。
 このところ、日経の人事管理に関する論調はずいぶんマトモになってきていますが、こうした不勉強はいただけません。また、「他人の不幸がうれしい」という卑しい心情が相変わらずのようなのも残念です。

■2004/06/16 (水) 労働需給の改善が最重要

 今朝の日経新聞「経済教室」に、太田清氏の「所得階層の固定化進む」という論考が掲載されていました。家計経済研究所の貴重で良質なパネルデータを利用したもので、わが国の所得格差の拡大、階層固定化が進みつつあることが示されています。
 その主たる原因は、経済の長期低迷にともなう就業環境の悪化、とくに女性や若者を直撃した非正社員化であるといいます。したがって、格差を縮小し、階層化を防ぐには労働需給の改善が必要であると述べています。まことに頷かされる所論といえましょう。
 とくに注目すべきなのは、若者や女性の就業支援、能力開発、仕事と育児の両立といったミクロ対策も重要だが、なによりマクロ経済の拡大を長く持続させ、全般的な労働力需給を改善することが必要であると述べている点です。「労働力需給がタイトになると、若者が職業能力を身に付ける機会が増え、そうした中で所得格差は縮小していきやすくなる。そのことは歴史が示している」という記述は、実務家の実感にまことによく一致しています。
 しかるに、わが国の労働政策をみると、前者のミクロ対策ばかりに血道をあげ、後者への努力は放棄されているかのようにすらみえます。とりわけ、産業の振興を通じて後者に深くコミットすべき経済産業省が、妙に他省庁の所管にしゃしゃり出て前者の政策を声高に叫んでいるのは、不審を通り越して滑稽ですらあります。

■2004/06/15 (火) 斯界の盟主

 多数の事業部を持つ大企業があったとしましょう。この会社では、主流である3〜4のドル箱事業部が利益の大半を稼ぎ出すいっぽう、それを支えるいくつかの傍流事業部は、会社にとって必要ではあるものの決算は赤字になっており、いくつかの事業部は小規模ながら手堅く商売をしている、という比較的ありがちなパターンにはまっています。
 当然のことながら、ドル箱事業部には優秀な人材が多く集まりますが、傍流事業部にもそれなりの人材が投入されていて、それでこの会社はうまく回っていたとしましょう。
 ところが、稼ぎ頭の事業部長が、もっと稼ぎたいということで、他の事業部からどんどん優秀な社員を引き抜きはじめました。そのうち、稼ぎ頭事業には必要以上に優秀な人材が集まりすぎ、トップクラスの営業マンが小口の顧客を担当するといった人材のムダが見えてくるようになったいっぽう、傍流事業部では人材不足で営業不振に陥り、赤字幅が拡大してきました。ところが、傍流との格差が開いたことに気をよくした稼ぎ頭の事業部長は、ますます他部門の人材を引き抜き、新入社員も「本人が主流事業部に配属を希望しているのだから」といって、いちばん出来のいい人を持っていきます。
 普通の会社なら、このあたりで社長が軌道修正するところですが、この会社では社長以上に稼ぎ頭の事業部長が実権を握っているため、どうすることもできません。この間に、こうした不合理に嫌気がさした超優秀社員は外資系にどんどん転職してしまいます。そうこうしているうちに、稼ぎ頭事業だけは利益を増やしたものの他の事業はどんどん経営が悪化し、ついには傍流の、しかし会社にとっては必要不可欠な事業部が閉鎖、他事業部との統合に追い込まれました。
 その結果、会社全体がうまく機能しなくなり、ついには他のいくつかの事業部も閉鎖、他事業部との統合を余儀なくされ、結局は残った事業部だけでやっていけるだけの範囲の会社になってしまうという、縮小均衡に陥ってしまいました。
 いまの日本のプロ野球って、こんな感じでしょうか。

■2004/06/14 (月) UFJ信託の受難

 週末の毎日新聞に、UFJ信託銀行が夏賞与を一律2割カットすると報道されていました。すでに労組とは前年並で決着済ですが、再交渉しているのだそうです。記事によれば、UFJ銀行およびUFJホールディングスが赤字決算となったため、グループとしての責任をとるために単独では最終黒字を確保しているUFJ信託も賞与カットすることになったのだとか(ちなみに役員は、週末の日経新聞によれば、UFJグループは信託もふくめ報酬を半減するのだそうです)。
 UFJがおかれた状況からすれば致し方のないところかもしれませんが、それにしてもUFJ信託の行員にしてみれば納得いかない部分は残るでしょう。そもそも、UFJ信託は、もともとは経営が比較的まともだった東洋信託銀行が、三和信託と東海信託を合併してUFJグループに入った会社ですから、もともとの東洋信託プロパーの行員にしてみれば、UFJグループへの帰属意識はあまり高くないに違いありません。しかも、UFJグループ再建策の一環としてこの秋には住友信託と経営統合され、グループを離れる見込みなのですから、なおさらでしょう。
 まあ、グループを離れればこういうことはなくなるわけで、行員の方々には心機一転を、といいたいところですが、今度は今度で住友との統合ということで、金融再編に翻弄される信託マンには苦難の日々?が続くのでしょうか。


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