年功賃金
 「年功」そのものは決して悪いものではなく、むしろ企業にとっても働く人にとっても好ましいものだろう。年功がある、すなわち多くの経験を積むことで多くの知識やノウハウを獲得した人は、当然能力も高いだろうし、したがって賃金も高くていいはずなのである。「年功」が「能力」にリンクしているかぎり、年功賃金は能力賃金である。
 こんにち、年功賃金の評判がおそろしく悪いのは、おそらく年功賃金そのものの不備ではない四つの要因のせいである。第一に、年功を積んで高い能力を持つ人が増えたのに、その能力を生かせるような仕事やポストがないということである。したがって高い能力を持ち、高い賃金を支払われている人が、それに見合った仕事やポストにつけず、結果として企業にとって高くつきすぎるということが起きているのである。
 第二の要因は、賃金体系があまりに後払い的になっているということだ。長期雇用を奨励し、人材育成投資を回収するために若いうちは賃金を貢献より低く抑え、勤続が長くなってから貢献より高い賃金を支払う後払い・長期精算的な賃金にすることは一理あるわけだが、あまりにその程度がきついと、組織が拡大せず若い人が入ってこなくなると、安い賃金で働く人が減るから高い賃金で働く人の割合が高まり、平均単価が高くなる。これは第一の要因ともあいまって大いに人件費を高めるだろう。
 そして第三の要因は、年功賃金というよりは年功的賃金になっているところにある。年功賃金においては経験年数が能力の代理指標として有効であり、さらに新卒一括採用であれば年齢が経験年数に代わりうる。しかし、誰しも経験によって等しく能力が伸びるわけではないし、ときには知識やノウハウが陳腐化して能力が後退することだってあるだろう。そういうことに対してはきちんと人事考課などで修正をはかっていかなければならないわけだが、あまりに硬直的な年齢インデックスの賃金制度を作ってしまうと、賃金を能力に適正に応じたものにできなくなってしまう。
 最後に第四の要因は、賃金が生計費に配慮して決められており、その生計費が年功的賃金を必要としている、ということである。要するに、世の中が、結婚し、子どもが生まれ、歳を追って生活費に限らず教育費や住居費などが多く必要となるようにできているのだ。
 こうしてみると、年功賃金の評判が悪いのは、むしろ人事制度や人材育成に問題があったり、制度の設計や運用が不適切であったりするだけであって、年功賃金の考え方そのものに由来する問題によるものではないことが判る。能力賃金が結果として年功賃金になっているならそんなに問題にはならないはずなのだ。
ご注意: この用語集は、管理人の個人的なコメントを述べたものであり、用語の正確な定義を記載したものではありません。くれぐれもご注意ください。

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