親が子どもに就かせたい職業(13.11.29)



 繊維・化学大手のクラレが、毎年、同社製品であるランドセル用合成皮革の「クラリーノ」を使用した「クラリーノランドセル」を購入した新小学生の親を対象に、「将来こどもに就かせたい職業」の調査を行っています。調査項目はシンプルに「親が将来子どもに就かせたい職業」の1点のみ(1999年以降、子ども自身の就きたい職業も調査)で、あまり分析の余地はありません。とはいえ、すでに10年以上継続的に実施されており、サンプルも4000〜6000くらい確保されていますし、「クラリーノランドセル」は基本的には普及版ですが高級品もあり、ランドセルにおけるクラリーノのシェアは6割を超えているそうですから、比較的サンプルセレクションバイアスの少ない良好なデータと言えそうで、なかなか貴重な調査であるといえると思います。
 さて、今年の結果を見てみますと、まず男の子の親の「子どもに将来就かせたい職業」は、案の定「公務員(国家・地方)」が25.5%でトップです。これは手元に資料のある92年以降、堂々10年連続のトップで、いつの時代も我が子には安定した職を願う親心というところでしょうか。とはいえ、比率の方は、まだまだバブル期からの人手不足が続いていた92年には14.5%でしたが、その後は20%前後で推移し、雇用不安が強まった99年以降は25%前後に上昇しており、雇用失業情勢の悪化を反映して、公務員指向が高まっているようすがよく伺えます。
 第2位は「スポーツ選手」で、これも10年間不動の2位の座を確保しています。ただし、これまた、比率は94年の15.0%から一貫して低下、01年にはついに9.4%と10%を割ってしまいました。第3位は「医者」で、これまた10年間不動の3位。公務員、スポーツ選手、医者というのが10年間不動のベストスリーということになります。医者も92年には13.4%と、公務員と変わらないくらいの支持を集めていましたが、00年には8.8%にまで下落。やはり社会的地位は相対的に落ちてきているようです。スポーツ選手はやはり不況で不安定さが嫌われたのでしょうが、医者の方は、はたして都市部の医者あまりが影響したのか、あるいは医療保険をめぐる問題が悪印象なのか、いろいろ考えられるところです。
 「会社員」(=サラリーマン)は4位で、過去10年間多少の浮き沈みはあるものの4〜7位には支持されており、ベストスリーに次ぐ安定的地位は確保しています。その一方で、92年には18位で1%台の支持しか集めていなかった「職人(大工・左官など)」が、昨年、今年は5位にまで上昇しており、比率も5.5%にまで伸ばしています。雇用情勢の悪い中、サラリーマンが依然として支持を集める一方で、「手に職」という意識も高まっているということでしょう。ちょっと意外なのが「コンピュータ関連」が17位、1.2%と低迷していることで、昨年、一昨年もほとんど変わりありません。小学1年生の親ですから、すでにコンピュータ・アレルギーはかなり薄まっているはずなのにこの結果というのは、長時間労働などのマイナスイメージが強いのでしょうか。ちょっと不思議です。
 次に女の子の上位を見てみましょう(職業名はジェンダー・ニュートラルなものにすべきかも知れませんが、ここでは一応調査で多く使用された名称で記載します。ご了承ください)。2001年のトップは「看護婦」の12.8%で、4年連続の首位ですが、比率は98〜00年の17%前後から大きくダウンしています。第2位は「保母」で11.7%。これは00年の7.7%、4位から躍進しています。この2つの職業は、10年間つねにベストスリー入りしていて、安定的な人気を誇っています。
 第3位はやはり「公務員」で、11.5%の支持を集めました。92年は8位でしたが、93年以降はベスト5を外れることはなく、ここ3年は2→2→3位と上位に食い込んでいます。ちなみに、95・97年には1位に支持され、ベストスリーの常連だった「教師」は今年は「医師」にも抜かれて5位に転落。その「医師」は女の子でも人気が高く、10年間つねに4位から6位の間にランクされています。
 男の子では「スポーツ選手」にも人気が集まりましたが、女の子の方はそれに近いイメージの仕事は意外に不人気で、「スチュワーデス」は以前は4位くらいには来ていましたが、ここ数年は8〜9位が指定席になっています。もともとかなりハードな仕事なところに、このところアルバイト・スチュワーデスが出てきたり、労働条件も優位性が低下していたりしますし、最近ではかつてほどのようなイメージの良さはないのかも知れません。「芸能人・タレント・歌手・モデル」は13位で、昨年の7位以外は10年間ベスト10に入っていません。「ステージパパ・ママ」もそう多くはないということのようです。
 こうして見ると、小学1年生の親ですから、年齢的には30代のカバーする範囲が広いだろうと思うのですが、そのくらいの世代でもまだまだ「女の子らしい仕事」という意識が根強いことが伺われます。ジェンダー・フリーへの道はまだまだ厳しいということでしょうか。その一方で、98年までは6〜7位を確保していた「ピアノ教師」が昨年・今年は10位に後退していることや、「教師」と「公務員」が逆転しているなど、着実に意識が変わっていると思わせる結果も出ています。99年に、それまでの「ol」から「会社員」に選択肢が変わっているのですが、そのときに順位が8位から6位に上がり、比率も1.4ポイント上昇しているのも、意識の変化を反映しているかも知れません。
 ちなみに、99年から付け加えられた「子ども本人が就きたい職業」のベストスリーは、男の子が「スポーツ選手」「警察官」「運転士・運転手」、女の子が「パン屋・ケーキ屋・お菓子屋」「花屋」「看護婦」。すでにジェンダーが刷り込まれていると嘆く向きも多いでしょうが、私は正義感の強い男の子と献身的な女の子が多いことになんとなくほっとするものも感じます。みなさんはいかがですか。

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