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大手時計メーカーのシチズン時計は、完全成果主義型の新しい雇用体系を取り入れた「Career-Build社員」の採用をこの4月23日からスタートしたそうです。「平成15年度より採用」となっていますので、一応来年3月卒業予定の新卒者を念頭においたものと考えることができるでしょう。内容的には、住宅手当、扶養手当等属人給がない完全成果主義型給与の年俸制で、具体的な職種・職務で契約して本人の希望に応じて配属、1年契約の反復更新で、いわゆる退職金前払制度になっている、ということです。 具体的には、賃金は大卒初年度年俸で600万円+インセンティブ(0,40,80,120万円)で、「賞与分・退職金負担分・通勤手当・扶養手当・住宅手当を想定して水準設定をし」たということです。福利厚生も、「独身寮・住宅融資・リフレッシュ休暇・永年勤続等の補助は行わない」ということで、独身寮の供与は金額換算すると大きいですから、この水準でもそれほど高いというわけではないかも知れません。新入社員の場合、最長3年間は完全年俸制への移行期間とし、その間は(インセンティブの変動を除いて)年俸のアップダウンはなく、4年目までに完全年俸制へ移行するということです。希望すれば、4年目以前に完全年俸制に移行することも可能なようです。 さらに、採用時にコースが3種類設定されています。「スペシャリスト指向コース」は募集人員約25名で、得意の専門領域で、グループを代表する専門家を目指す、約束した部門に配属し、スペシャリストの力を伸ばすとなっています。まあ、いわゆる技術系ということになるでしょうか。「マネージャー指向コース」は募集人員もぐっと少なく約10名で、希望の事業分野でローテーションを通じて、将来の事業全体の責任者、管理者、キーパーソンを目指す、希望の事業分野の中で専門を活かせる部門からスタート、ローテーションを通じて枠を広げる、とされています。こちらの初任配属は技術系部署プラス営業なので、やはり基本的には技術者ということになりそうです。「ゼネラリスト指向コース」の募集人員はさらに少なく約5名で、しかもそれが2つに分かれています。ひとつは各部門、各機能をローテーションしながら、グループ横断機能、本社機能のスタッフ、参謀を目指す、本人の希望分野からスタートし、ローテーションを通じて、枠を広げる、というもので、具体的にはグループ横断的な本社の管理部門の文系採用ということのようです。もうひとつは新分野・新事業を探索し、新分野・新事業立ちあげの企画、コーディネーターを目指、企画部門からスタートし、ローテーションを通じて、枠を広げる、というものです。そのものずばりの新規事業開拓要員というところで、文理いずれもありという世界でしょう。 年俸決定については、基本的には目標管理制度の中で、「取締役クラスを含む複数人による内部評価」と「外部コンサルタントと提携したマーケットプライスの査定」を実施し、その双方を勘案して(説明例を見ると「間を取る」ということらしい)決定するということです。年俸を月例賃金と夏冬の賞与にどのように配分するかは本人の自由ということです。それに加えて、年度末に目標達成度に応じた賞与を支給するとなっていますが、さらに別途「新技術開発、発明、特許、コスト削減等において、多大な成果(利益)を挙げた場合には、特別インセンティブを支給」となっているところを見ると、賞与はたいした金額にはならないのでしょう。 勤務形態についても、「業務の内容に応じた勤務形態にて、勤務します。(スーパーフレックスタイム勤務、在宅勤務等も可能)」となっており、かなりの自由度がありそうです。 この新制度をどう見るかですが、もともとシチズンはかなり先進的な人事制度を導入しています。目新しいところは、退職金前払、福利厚生もかなり限定的な完全年俸制というところと、外部評価を年俸決定に取り入れたこと、1年契約の有期雇用にしたことでしょう。それからもう一つ、どうやら今回の新卒採用はすべてがこの新制度であるらしい、ということが上げられます。 退職金や福利厚生がどのように初任年俸計算に織り込まれたのかは今一つ明確ではありません。特に関心をひくのは、退職金優遇税制の分を会社が持ち出したのか否かで、それによって会社の気合の入り方が推察できるわけですが、これに関しても不明です。ただ、持ち出したのならそれを明らかにしない理由はないように思われますので、おそらくは持ち出しまではしていないものと思われます。外部評価を入れたというのも面白いところですが、普通に考えて外部評価は内部評価より辛くなることは目に見えていますので、これは案外巧妙な年俸抑制策かも知れません。本人も外部の査定となれば納得せざるを得ない部分もあるでしょう。また、会社は気付いていないが実は希少価値のある人材の流出を防ぐという意味でも効果があるのかも知れません。いずれにしても外部のコンサルを入れるとなればかなりのカネも必要でしょうから、それに見合うメリットがあると見込んでいるのでしょう。1年契約の反復更新にしておくことの経営にとってもメリットは言うまでもありません。 とりわけ目をひくのは、今回の新卒採用がどうやらすべてこの制度によるらしい、という点です。 シチズンは時計メーカーとして知られていますが、すでに売上の半分はデバイスなどの情報機器・部品で占められています。したがって、今般のIT・半導体不況はシチズンの経営を直撃しており、業績は大幅赤字、年初には希望退職の募集を余儀なくされました。結果として500人近くが希望退職に応募し、これにともない50億円を超える特損計上となっています。 要するに、通常であれば新卒採用をやるような状態ではないということです。とはいえ、500人近くもの希望退職が出てしまうと職場はそれなりに要員不足も起きるでしょうから、比較的安価な新卒者がほしいことも事実でしょう。そこで、40人という小規模な採用計画をかまえ、さらにこの際通常の正社員採用ではなく、人件費負担の硬直化を招きにくい有期雇用・年俸制・退職金ナシという制度で採用することにした、というのが実態ではないでしょうか。もちろん、40人のためにわざわざ新制度を入れるという話でもないでしょうから、前々からこうした制度のスタディは進めていたのだろうと思いますし、現状のような就職難の時代には、こうした条件でもそれなりの人材が採用できるだろうとの読みもあったのでしょう。 実際、この制度で入社した人であっても、将来的に期間の定めのない雇用にシフトするという含みもどことはなくあるように感じられます(まあ、退職金を復活させるのは難しいかも知れませんが)。1年契約の社員ばかりで会社がうまく運営できるとも思えませんので、この制度はこの制度で生かしながら、業績が回復したら通常の新卒採用も再開して併用していくという作戦なのかも知れません。 |