非営利しかし非効率(14.6.13)


 かなり以前の話になりますが、1996年に、連合が旗振り役になって、労働時間短縮の時代に余暇を豊かに過ごすため、サラリーマンが簡単に安価でゴルフを楽しめるようにということで、「市民ゴルフ・スポーツ協会(PGS協会)」を設立、ゴルフ場予約のあっせん事業を始めました。6月11日付読売新聞の記事によれば、この事業が今ではいたって不振で、協会理事に就任している労働界の重鎮たちが私財を投入してなんとか継続しているという状況に陥っているのだそうです。私はゴルフをやらないので理解不足や勘違いがあるかも知れませんが、今回はこの問題を考えてみたいと思います。
 さて、この事業ですが、「設立趣旨」を読むと、一般市民がゴルフを楽しもうとしても、メンバーの紹介や同伴が必要であったり、料金が高かったりするなどハードルが高いことを指摘したうえで、「せめて月に一回は、気の合った仲間とゴルフに行きたい」という「ささやかな市民ゴルファーの夢」に応えるものだとうたっています。具体的には、関東地区を中心に全国のゴルフ場と優先予約や優待料金の契約を結ぶ一方、法人・個人を問わず幅広く会員を募集して、予約や料金割引のサービスを提供しようというものです。必ずしもゴルフに限らず、スキーなどでも同様のサービスを実施しているようです。こうしたサービスを「非営利で行うことにより、会費などを低く設定できる」というのが、この取り組みの基本的な着眼点であると思われます。ちなみに、会費を見てみると、労組や企業などの法人会員は1口4人無記名で入会金5万円・年会費1万円、個人会員は1口1人記名・3人無記名で入会金2万円・年会費1万円で、その他シニアや女性には年会費12000円で入会金ゼロというオプションも準備されています。
 ところが、スタートしてみると初年度募集目標2000口に対して、実績は連合傘下の労組を中心に約760口と約3分の1にとどまり、いきなり計画が齟齬をきたしました。その後も、経済の低迷が長期化する中でゴルフ場の客数が減少し、予約を取るのも容易になり、また、デフレと業績不振の中で料金も下げざるを得なくなったことから、PGS協会の会員となるメリットはどんどん失われ、今では会員数が220口にまで減少しているということです。
 いかにも見通しが甘かったという感じですが、設立当時を思い起こしてみれば、バブルの余韻さめやらぬ中で、たしかにまだまだゴルフ場のプレー料金は高かったようですし、総労働時間短縮の熱気も残っている時期で、時短で生まれた余暇を豊かに楽しむための取り組みとして有意義であると考えられたのは、それほど不自然ではなかったのかも知れません。1996年といえばバブル崩壊後に一時的に景気が上向いていた時期であったことも判断を誤らせたのでしょう。とはいえ、こういう事業を立ち上げるときには、どういう法人・個人がどれだけ会員になってくれるのか、かなりの程度具体的な名前をあげて計算するのが普通ですから、実態の3倍近くを計画していたというのは杜撰というしかないでしょう。
 さらに、ちょっと調べてみた限りの印象ではありますが、協会の仕事の実態もかなり杜撰な感じを受けます。今では予約は容易になっているのですから、このサービスの売り物は優待料金ということになるのでしょうが、PGS協会のホームページで契約ゴルフ場の情報を見てみても、PGS協会利用の場合どれだけの優待になるのかがわからないのです(少なくとも、かなり手間をかけて探しても見つからないことは事実です)。それどころか、個別のゴルフ場紹介のページや予約申し込みのページへのリンクがいたるところで切れている始末で、これではこのページを入会や利用を考えている人が見たときに必要な情報が得られません。メリットを計算できない団体に入会金や会費を払って加入しようという人は少ないでしょう(もっとも、このホームページは移転したばかりらしいので、今後改善されるのかも知れませんが)。
 その他にも、読売新聞の記事によれば、99年(記事には98年とありますが、正しくは99年のようです)には設立当初につくった運営会社を解散して直接運営に切り替えたほか、事務所を家賃の安いビルに移転するなどの経費節減や人員削減も行いつつ、事業を継続しているとのこと(ホームページを移転したのも経費節減の一環かも知れません)。
 必死のリストラというところかも知れませんが、オフィスを移転したと言っても日本橋(中央区新川)です。本当にこの事業で都心に自前のオフィスを構える必要があるのでしょうか。郊外にあるどこかの労組の事務所の一角を間借りするくらいでも十分なのではないでしょうか。また、なぜわざわざ運営会社を作ったのかも不明です。ゴルフ関連サービスの経営ノウハウのある人材を招くためというならともかく、元労組系国会議員秘書が社長におさまったというのでは、ポスト対策であったという印象を禁じえません。こんな放漫経営をしていたのでは、「非営利だから安価なサービスを提供できる」などというのも空文に過ぎないでしょう。これを見ていると、同様に「非営利だから適正な料金と労働条件を示すことができる」という建前で連合みずからはじめた労働者派遣もどうなることやらという感じです。
 さて、「入会金を集めた責任もあるのですぐには解散できない」ということで、98年以降は、理事のうち元連合会長の山岸章氏をふくむ7人が合計一千万円以上の私財を寄付して事業を継続しているとのことで、これは自分たちの見通しの甘さゆえという反省もあるのでしょう。とはいえ、山岸氏は「時代が変わり、ゴルフ熱が冷めてしまった。不正行為があったわけではないので、やむを得ない」と他人事のようなコメントを出しているとのこと。悪いことをしているわけでもなし、自分のポケットから金を出して文句を言われる筋合いはないということかも知れませんが、これでは事業を成功させることは難しかろうというのが私の偽らざる感想です。

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