独IGメタル、ストライキ決行中(14.5.9)



 ドイツの最有力産別労組であるIGメタル(独金属産業労組)が、今次春闘の交渉決裂を受けて、この6日からストライキに突入したそうです。IGメタルの組織は530万人といわれていますが、今回ストライキに突入したのは、ドイツ南西部のバーデン・ビュルテンベルク州の支部で、6日は自動車工場などを中心に6万人が参加、ダイムラークライスラーやアウディ、ポルシェなどで約20の工場がストップしたそうです。
 7日は約2万2千人と規模は縮小したものの、電機工場などを中心にストライキが行われ、BSH(シーメンスとボッシュの合弁による家電メーカー)や医療機器メーカーアエスクラプなどでやはり約20の工場がストップしたとのことです。8日も引き続き1万3千人がスト突入、9日はキリスト生誕記念日の祝日ということでストも一服ですが、10日もスト続行を決定、さらに来週もストの継続を検討しているということです。これだけの規模で本格的なストライキが行なわれたのは、1995年以来7年ぶりということで、なかなか強硬な姿勢といえるでしょう。
 ここまでの経緯をおさらいしておきますと、当初今年の春闘では、IGメタルが「景気は回復しつつある」「過去2年、不況下で低率妥結している」などとして6.5%の大幅賃上げを主張、これに対して経営サイドのゲザムトメタル(独金属産業経営者連盟)は「景気は依然として低迷しており、大幅賃上げは一段の景気後退を招く」として2%の賃上げを主張、スタートから険悪な雰囲気の中での交渉となり、IGメタルは散発的に時限ストを打つなど強硬姿勢をアピールしていました。
 ドイツでも、わが国同様、金属産業が春闘のリード役となっているわけですが、一昨年と昨年は化学産業の回答が先行して相場形成役となりました。いわばパターンセッターが交代している状態にあるわけですが、今年も金属産業に先立って、4月18日には化学産業が3.3%の回答で妥結しました。これを受けてゲザムトメタルのカネギーザー会長は、翌19日に「賃上げ3.3%プラス190ユーロ×2回の一時金」を提案し、歩み寄りを示しました。しかし、IGメタルのツヴィッケル執行委員長は「なんとしても4%は譲れない」としてこの提案を拒否、交渉はデッドロックとなり、IGメタルはストライキに向けて動きはじめました。30日にはベルリン特別市、ブランデンブルク州、バーデン・ビュルテンベルク州の各地区でスト権投票が行なわれ、圧倒的多数の賛成でスト権を確立しました。
 この間も、ゲザムトメタルは第三者の仲介・仲裁による交渉継続を提案したものの、ツヴィッケル委員長は「3.3%を超える新提案が交渉再開の絶対条件」と要求、カネギーザー会長がこれを拒否したため、ストライキ突入が不可避となったものです。
 今回のストライキの影響について、ドイツのシンクタンクは「本格ストに突入した場合、ドイツの国民経済に大きな打撃を与える」との試算を発表しています。すなわち、自動車産業の地盤である独南西部で25万人が5日間のストライキを行なったと想定すると、業界全体の損失は12億ユーロに達し、さらにストライキ中の生産遅れを挽回するために残業や休日出勤が発生してコストアップ要因になるとしています。ちなみに、前回本格的なストライキが行なわれた7年前には、そのコストアップを吸収するために、結果としてその翌年・翌々年で約20万人分の仕事が削減されたと指摘しています。
 また、仮に組合が要求する4%賃上げを実施した場合、それがコストプッシュ・インフレを招くであろうことは確実視されているようです。この場合には、ユーロの元締である欧州中央銀行が利上げに踏み切る公算が高く、ようやく回復の兆しが見えてきたドイツ経済にブレーキをかける危険性があると指摘されています。
 もっとも、今のところはストライキの規模が想定よりかなり小さく抑制されていることから、現時点で経済に与える影響は大きくないと見られているようで、ドイツ連邦労働局のゲルスター長官も「当面ドイツ経済に大きな影響を与えない」と発言しているようですが、ストライキが拡大したり、解決のために経営サイドが大きな譲歩を強いられるようなことがあると、事態は大きく悪化しかねません。
 このように、労組の強硬姿勢が経済に悪影響を与える可能性が高いことが、労組を支持基盤とする社会民主党が政権与党となっている現政権が積極的に関与・介入できない理由になっているようです。ドイツではこの9月に総選挙を控えており、時期的に景気回復が最大のポイントとなるだけに、現政権としても労組支援の姿勢を示しにくくなっているということです。再選を目論むシュレーダー首相は、今のところ労使双方に向けて「交渉の早期解決を望む」とのコメントを出すにとどまり、それ以上の関与をさけていることが、交渉難航の一因であると言われているそうです。
 ちなみに、ドイツの有識者の間では、現時点でインフレを招かない賃上げ水準は3.5%程度というのが大方の一致した見解なのだそうです。そういう意味では、化学産業やゲザムトメタルの3.3%という数字はかなりいい線を行っていると言えそうです。前出のゲルスター労働長官も「ストライキの影響が広がる前に解決し、経済への影響は限定的なものにとどまる」との見通しを示しているようで、おそらくは3.4〜3.5%くらいに譲り合って決着するのではないかという希望的観測が行なわれているようです。
 ドイツでもEU諸国のごたぶんに洩れず、極右の台頭が見られるそうですし、ドイツ以外にも、イタリアなどで労働運動の活発化が起きているようです。おそらく、今はEU全体が、統合、通貨統合と続いた一連の変動を過ぎ、それにともなう好景気も一巡して、若干の倦怠感と疲労感を感じている時期なのでしょうか。それが今回のIGメタルの強硬姿勢、ストライキ突入に反映していると考えることもできるでしょう。景気に政治的思惑もからんでなかなか難しい条件もあるようですが、希望的観測のとおりに解決がはかられることを期待したいものだと思います。

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