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平成15年3月高校卒業予定者の就職が非常に厳しい状況にあるようです。9月末時点での内定率は33.6%と昨年の同時期を3.6ポイント下回り、求人もだいぶ増えてはきましたが、やはり0.72倍と低水準にとどまっています。 若年無業者やフリーターの増加、あるいは定着率の悪さなどといった若年雇用問題に関しては、パラサイト・シングルであるとか、職業意識だとか職業観だとか、若年者自身に問題を帰するような論調も依然として多々見られますが、これほどまでの需要不足の中では、職業意識をどうこういったところでどうにもならないというのが実感ではないでしょうか。 作家の村上龍氏が主宰するJMM(Japan Mail Media)という企画があります。主に日本の政治・経済に関する村上龍の質問に、金融問題の専門家が回答するメールマガジンが中心で、購読している方も多いでしょう。その9月16日のバージョンでは、この深刻な高卒就職情勢が取り上げられました。質問の趣旨は、7月末時点で都道府県別の高校新卒の有効求人倍率が0.09倍で全国最低だった青森県と沖縄県の高校生にどんなアドバイスをするか、というものです。 さしもの「金融問題の専門家」たちもこの設問には苦戦したようで、おおむね「都市部でフリーターでもしながら、いろいろ勉強し、手に職をつけ、自分のやりたい仕事を見つけなさい」くらいのところに落ち着いています。実際、現実的にはこのくらいが無難な助言でしょう。「これからの時代、就職して正社員になったから安泰というわけではないのだから」というコメントも多いのですが、これは助言というより慰めに近いでしょう。 その他には、「就職はやめて農業でもやったらどうか」という助言は有益そうに思えますが、そもそも農業が嫌だから就職希望なのだ、と反論されそうですし、「企業の採用担当者に対して自分の能力を示すシグナルとなるような資格をとれ」という助言に対しては、高卒で就職する人が取得できる「能力を示すシグナルとなる資格」というのが具体的にどれほどあるのか、という問題点があります。「海外に出ては」という助言も、就職する高校生には現実的な助言ではないでしょう。デフォルトで回答が期待されているレギュラーの一人は、「最後は匙をなげるしかないかも」しれないとギブアップしていますが、これも率直な意見かもしれません。少なくとも、高校生がおよそ共感できそうにない自慢話を並べた回答より数段マシなように思われます。ちなみに村上龍氏の回答も読みたいところでしたが、なにもありませんでした。まあ、質問した人なのですから当然かも知れませんが。 私がこの設問を見て思い出したのが、東大助教授の玄田有史氏の著書「仕事の中の曖昧な不安−揺れる若年の現在」の最終章「18歳に話をする」でした。これは玄田氏がある高校に招かれて高校生に就職指導の講演をした(正確には「しようとした」)内容ですが、仕事に「頑張る」な、とか、自分で自分の身を守れ、といった「助言」が含まれています。「頑張る」な、というのは、しょせんマーケットが厳しい中なのだから、あまり自分を責めて(あるいは他人に責められて)無理をするのはやめなさい、ということでしょう。身を守る、というのは、「もめごとになったら労働基準監督署に行きなさい」という、まさに「助言」です。どちらも、JMMの無難な助言よりはるかに有益な助言といえるのではないでしょうか。 さて、それでは私ならどんな助言をするのか、ということですが、私には玄田氏やJMMの諸氏のような立派な助言はできません。ただ、付け加えることがあるとすれば、それは次のふたつだろうと思います。 ひとつは、「明日からでも、毎日、始業から放課まで、授業を全部受けてみませんか」ということです。現に高卒で就職してくる若者を見たり、彼らの話を聞いたりすると、高校を休んだり、授業を途中で抜けたりすることは日常茶飯事になっているようです。これではまずい。放置しておくと、東大教授の苅谷剛彦氏が指摘しているように、「自分は勉強なんかしなくても大丈夫」という、なかば開き直りに近い、根拠のない有能感にとりつかれて、勉強に対するやる気、インセンティブが喪失してしまう危険性が高いでしょう。 勉強に集中する、話を理解しようとする、練習問題を考える、こうした基本的なフォームを身につけるには、平凡ながら毎日授業を全部きちんと受けることが有効でしょう。それができているかいないかで、同じフリーターをやるのでもずいぶん違ってくるはずです。運良く正社員になれれば、否が応でも、なかば強制的に一日八時間は仕事をさせられますから、嫌でも集中せざるを得ず、自然と技能は身についてきますが、フリーターではそうはいかないのです。基本的なフォームができていれば、フリーターの仕事の中からなんらかの物を会得することができるでしょうが、基本的なフォームのできていない人は、漫然と働いて過ごしてしまう。この差は大きいはずです。 もうひとつは、「都市部に出るのなら、遠慮なく仕送りをしてもらいましょう」ということです。わが国では、同じ仕事をして同じ賃金をもらっているとすると、そのほかに親から仕送りをしてもらってそれなりの生活をしている人より、その賃金だけで苦労してゲットバイしている人の方をありがたがる風潮がありますが、そういう価値観はもう古いのではないでしょうか。それで健康的に暮らすことができ、将来に向けての投資もできるというのであれば、遠慮なく仕送りを受ければいいのだと思います。親にそれだけの余力があるということは、若い人の賃金が低いことと全く無関係ではないのですから。 この19日には、厚生労働大臣と文部大臣が、日本経団連、日商、中小企業中央会のトップを集めて、採用増を求める異例の要請を行ったそうです。昨今の厳しい就職情勢の中で、高校生が卒業後の進路に展望を描けないことが、高校生の意識に悪い影響を与えるという悪循環に陥っている可能性も否定できないのではないかと思います。若年自身の問題を訴えるより、就職情勢の改善を最優先に考えるべき状況ではないかと思います。 |