公務員給与を引き下げよ(14.6.6)



 先月26日、竹中経済財政担当相が国家公務員の給与を引き下げるべきだとの見解を示したのを発端に、公務員給与をめぐる論議がまきおこっています。竹中担当相は28日の記者会見でも「税制改革を進めるには政府もスリム化して納税者の納得を得ることが必要」との趣旨であらためて引き下げを主張しました。これに対して福田官房長官は同日、「人事院勧告の民間準拠システムは無視できない」としたうえで、「民間のベースダウンが言われているが、それが一般的なことなのかどうか人事院でよく調査し、判断するしかない」と述べ、歳出削減のための給与引き下げには否定的な見解を示す一方、民間準拠で下がることは容認する姿勢を示しました。小泉首相は、人事院勧告は尊重すると明言する一方で、「今から上げます、下げますとは言えない。あらゆる歳出を見直す中で状況を見て判断すべき」と、慎重ながら歳出削減のための引き下げにも含みを残しているようです。こうした動きの中で、月曜日(3日)にまとめられた財政制度等審議会の建議の中にも、「公務員給与は退職手当なども含め抑制」との内容が織り込まれました。公務員給与の引き下げがかなり現実味をおびてきたといえそうです。
 それでは国家公務員の給与の実態はどうかといえば、人事院勧告にしたがってベースアップを抑制するかたわら期末手当の支給を減額していることから、ここ3年連続で年間給与では減収となっています。とはいえ、民間賃金はそれを上回る減収となっているのが実態です。竹中経済財政担当相は、「官民格差が生じないようにしてきた人事院勧告のシステムが機能していない」と述べているそうですが、従来から、実態としては国家公務員給与は高いという批判はありました。国家公務員に限らず、地方公務員の給与もおおむね人事院勧告と横並びの人事委員会勧告にそって決まるわけですから、ほぼ公務員全体の給与が高いと考えていいでしょう。
 人事院勧告は民間準拠を建前としているわけですが、その算定の根拠となる民間給与実態調査の対象は「企業規模100人以上、事業所規模50人以上」の企業となっています(抜き取り調査)。このやり方だと、100人未満の企業はまず除外されますから、小規模・零細企業の実態は反映されません。この方法は、社員の賃金の規模間格差が拡大していること、小規模企業では非典型の比率が高いことの二重の意味で勧告が高くなる方向に働くでしょう。
 さらに、その中で、50人未満の小規模な事業所が除外されていますが、これがまた大問題なのです。例えば、日本生命という会社がありますが、この会社は従業員が7万人近い大企業です。そのうちの5万3千人弱がいわゆる「保険外交員」の女性、昔でいうところの「ニッセイのおばちゃん」です。これらの女性外交員たちのほとんどは全国で2000近い営業部・営業所に勤務しており、そのほとんどが50人未満の事業所にあたりますから、調査対象から除外されます。かくして、日本生命で調査対象となるのは、高給で有名な生保の本社社員だけとあいなるわけです。まことに巧妙な手法であると言わざるを得ません。
 まあ、国家公務員の立場から見れば、従業員数人の企業まで含めて比較するのが適当かどうかという議論はあるのかも知れません。あるいは、現業部門は含まれていないとの意見もあるかも知れません。しかし、職種や職位、年齢学歴などについてはラスパイレス方式で補正が行なわれているわけですし、職場や就労の実態を考えると、「企業規模100人以上、事業所規模50人以上」との対象選定が適切であるとは思えません。
 もうひとつ私が納得できないのは、この方法が「クビのつながっているサラリーマン」に準拠しており、雇用失業情勢の悪化がまったく反映されないということです。公務員といえども被用者であることに違いはありませんから、自営業者まで含めて比較せよとは言いません。しかし、公務員は法律で身分を保証されており、失業はありえないわけですから、比較するのであれば職についているサラリーマンだけではなく、「勤め先都合」などの失業者(当然賃金はゼロということになる)まで含めて比較すべきではないでしょうか。そもそも、とりわけ現状のような雇用失業情勢の厳しい折には、公務員の雇用保証は労働条件の一部としても非常に魅力的なはずであり、だからこそ不況期には就職先として公務員の人気が高まるわけです。本来なら、この「雇用保障」の分を金額換算して、その分は公務員の給与は民間より低くすべきだというのが正論ではないかと思います。その他にも、官舎などの福利厚生は民間の水準を上回っているというのが通説ですし(もっとも、官舎は立地は良くても施設は良くないことも多いようですが)、雇用延長などについても「民間に率先垂範する」との建前かどうか、先行している部分が多々あります。財政制度等審議会は退職金の見直しにも言及していますが、これも民間準拠をうたう以上は、当然民間における最近の退職金の見直しの動向を反映させるべきでしょう。これはいずれ行なわれる予定なのかも知れませんが。
 連合は、財政制度等審議会答申に対するコメントの中で、「(答申は)『公務員給与(総人件費)の抑制』を主張しているが、これは人事院の役割を無視したものであり許されない」と反発しています。もちろん、人事院勧告は、労働基本権の一部が制約されている公務員に対して、民間労働者の交渉の成果を反映させようというものですから、その役割は十分尊重されなければならないことは言うまでもありません。
 とはいえ、だからといって現在のやり方をそのまま維持しなければならないということではないでしょう。民間準拠という考え方は維持するとして、人事院勧告の決定方法はかなり問題があり、結果として公務員の賃金は高すぎる水準にあると言えると思います。まずは調査方法、決定方法を適正化すれば、それだけで相当の給与引き下げに結びつくのではないでしょうか。
 歳出削減のための給与引き下げについても、すでに東京、大阪、愛知といった自治体で行なわれている実績もあり、公務員という職業の意味を考えれば決してありえない話ではないと思います。ただし、あえてその議論に踏み込む前に、まずは民間準拠の正しいあり方を議論することが先決であり、効率的ではないだろうかと思います。

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