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雇用保険の財政が持たないということで、制度改正に向けた動きが始まっています。 雇用保険は昨年4月に大改正が行われ、離職理由によって給付日数が異なることとなったほか、料率の引き上げ、育児休業給付の引き上げなどが実施されたばかりですが、この改正も最大の理由は財政難でした。にもかかわらず、もう再改正するというのはいかにも見通しが悪かったという感がありますが、改正法が成立したのが一昨年(平成12年)4月で、検討が行われていた時期を通じて失業率は4.6〜4.8%で2年以上安定的に推移していましたし、それ以上大きく悪化することを前提にはなかなかできなかったということでしょう。いずれにしても、雇用保険の失業等給付の積立金は平成6年には4兆7500億円もあったのですが、平成7年から収支が赤字化して取り崩しが始まり、収支均衡するように法改正したものの、失業率の悪化もあって赤字と取り崩しが続き、厚生労働省の試算によれば今年度末には1437億円まで減り、来年度中にはついに底を突く見通しなのだそうです。ちなみに失業等給付以外のいわゆる三事業についてもやはり赤字続きで、こちらの積立金である雇用安定資金も本年度末には1000億円強まで減る見込みとか。 さて、今回の見直しに関しても、新聞紙上などではすでにさまざまな内容が報道されているようですが、基本的には、財政が赤字なのですから、収入を増やすことと支出を減らすことを考えなければならないことになります。失業等給付の総額は平成10年以降おおむね2兆5千〜7千億円程度で推移しており、赤字は1兆円前後に達していましたが、平成13年の改正によって3500億円程度にまで改善しています。これをどうやって縮小するかが問題になるわけです。 収入を増やす方に関しては、考えられるのは料率の引き上げと国庫からの補填ということになるでしょう。失業等給付に係る保険料の現行料率は1000分の12ですが、すでに前回改正で保険料率の上限は1000分の14とされているため、厚生労働大臣の決定であと1000分の2は料率を上げられることになっています。実はこれだけで3500億円以上収入を増やせる計算になりますが、料率引き上げには労使双方の負担増となるため、他の手立てをきちんと尽くした上でなければ反発を買うことになるでしょう。また、さらに雇用失業情勢が悪化した場合にはそれでも耐えられないということになります。 また、失業等給付については原則としてその4分の1をすでに国庫が負担しています。これまた、雇用保険法上は3分の1まで上げられることになっており、毎年3000〜5000億円程度の規模にのぼります。これも千数百億円の増収となりますが、当然のことながら財源(予算)の裏付が必要ということで、それほど簡単な話でもないようです。 それでは支出を減らす方はどうかと云えば、前回改正でかなり支出は効率化されたことは事実ですが、それでもまだムダがないわけではありません。たとえば、定年退職の場合の給付日数はかなり短縮されましたが、さらなる短縮が検討されてもいいものと思われます。あるいは、定年退職に限らず、結婚や出産を期に退職した人についても当面再就職の意思がない場合が多いので、給付日数を削減するという考え方もあるでしょう(いささか牽強付会ですが、これは結婚退職などのインセンティブを減らすという意味で就労促進の意味もあるかも知れません)。どうもわが国では失業給付に対して「保険料を払ってきたのだからもらって当然」という感覚が強いらしく、就労する意志がないにもかかわらず受給するケースが多いようですが、厚生年金などと違って雇用保険は強制貯蓄的な意味はないわけですから、就労の意志のない人には給付しないようくふうする必要があります(難しい課題ではありますが)。同様に、給付日数が残っている間に再就職した人に支払われる再就職手当も、本来は必要のなりものであるはずです。これは約4000億円もの規模に達していますので、この支給額を抑制することの効果は大きいものと思います。 給付水準についても、まだ高すぎるとの意見もあります。上限額を引き下げるほか、現在は標準報酬月額の80〜60%となっている給付率を、高額受給者については50%まで引き下げるという案もあるそうです。具体的にどれほどになるかはわかりませんが、これらの効率化によってかなりの支出減がはかれるのではないでしょうか。 失業給付以外にも、たとえば高年齢雇用継続給付についても、現に就労している人を対象としていることを考えると手厚すぎるとの批判もありますので、削減の余地はあるのではないでしょうか。この給付には平成14年度予算で総額約1300億円とかなりの金額が予定されており、効率化効果は大きいものと思われます。 「ミスマッチ対策」として強化されてきた教育訓練給付金制度についても、労働需要不足の中では必ずしも教育訓練の再就職促進効果は高くないとの批判も出はじめているようです。また、再就職や職業能力向上とは無関係に、OLが海外旅行に行くための外国語会話教室などで利用されているなどというのはよく聞く話です。これに関しては、まずは利用できる講座を給付金の趣旨に沿ったものに限っていくとか、あらかじめ具体的な再就職先を想定している場合に給付を限るとかいった対応が必要かも知れません。また、受講した成果は本人が享受することを考えると、80%という高率の給付はいかがなものかという印象はあります。雇用失業情勢の悪化にしたがって引き上げられてきた経緯があるだけに、はかばかしい効果が上がっていないのなら引き下げが検討されてもいいでしょう。上限の30万円を引き下げるという考え方もありますが、これは現状でも低すぎるという批判があることは考慮する必要がありそうです。融資制度の設定とセットにして引き下げるというくふうも考えられます。平成14年度予算の教育訓練給付の総額は約400億円ですので、たとえば8割の給付を6割にカット、上限も相応にカットすれば、100億円近い削減が可能かも知れません。 もう一つ、財政が厳しいということを考慮に入れれば、前回の改正で引き上げた育児休業給付を引き下げるということも考えられていいのではないでしょうか。給付総額は年々増えており、平成12年度の給付は約370億円と、教育訓練給付と同程度の規模に達しています。さらに前回の改正によって平成13年1月からは支給額が標準報酬月額の25%から40%に引き上げられましたので、平成14年度予算では約730億円と改正前の倍近くが計上されています。さらに介護休業給付が約210億円あります。仮にこの支給率を前回改正前の25%に戻せば、単純計算で約350億円の支出減となります。 これらの施策を組み合わせれば、当面は保険料率の引き上げや国庫負担増などを行わなくても何とか財政を維持できるのではないかという印象を持つのですが、どうなのでしょうか。景気は底入れしたとのことですが、雇用失業情勢は依然として厳しく、また失業率は景気の遅行指標でもあり、さらなる悪化がないという保証はありません。効率化で対処可能なのであれば、料率の引き上げはそうしたリスクに備えて温存しておくのが賢明な作戦ではないかと思いますが、いかがでしょうか。 |