サマータイムを考えよう(14.7.8)



 7月に入り、いよいよ夏も本格化、暑い日が続きます。今回は、季節に合わせて「サマータイム」を取り上げてみたいと思います。
 サマータイムは、日照時間の有効活用をはかるため、夏季(7ヶ月間とする国が多い)について、「時計の針を1時間早める」制度です。OECD加盟の29カ国のうち、日本、韓国、アイスランドを除く26カ国で採用されているということですから、国際的に普及した制度であるといえるでしょう(ちなみに、アイスランドは高緯度のため夏の日照時間が非常に長く、サマータイムを採用する意味がないのだそうです)。省エネルギー効果のほか、平日の終業後に明るい時間が長くなることから、アウトドアを中心として経済活動(消費活動)の活発化が期待されているとのことで、経済産業省(資源エネルギー庁)、環境省などが導入に積極的な姿勢を見せています。政府が今年の3月19日に決定した「改訂地球温暖化対策推進大綱」においても、「夏時間(サマータイム)の導入について、『地球環境と夏時間を考える国民会議報告書』も踏まえ、国民的議論の展開を図り、合意形成を図る。」との表現でサマータイムが織り込まれています。
 この「地球環境と夏時間を考える国民会議」とはなんぞや、ということで、過去の経緯を振り返って見ますと、最近サマータイムの議論が盛り上がったのは98年のことです。97年のCOP3(地球温暖化京都会議)を受けて、政府は98年6月に「地球温暖化対策推進大綱」を決定しました(3月に決定したのはこれの改訂版ということになります)。これに基づき、同年9月に「地球環境と夏時間を考える国民会議」が発足して、サマータイム実施についての検討が実施されたわけです。その結論が、「一定のコスト負担や課題に対応すること、あるいは切替時における若干の煩雑さを受け入れることが国民全体として必要となるものの、地球環境にやさしいライフスタイルを実現するきっかけとして、…その導入(2年程度の周知・準備期間をおいて)を図るべき」との報告として発表されました。今回の改訂版は、これを踏まえているわけです。
 さて、このサマータイム、98年当時の議論を見ても賛否両論で社会的合意というまでには到らず、今年は議論もあまり盛り上がりませんでしたが、やはり同様の状況にあるようです。
 賛成論は、当然ながら日照時間の有効活用と省エネルギーの効果を主張します。サラリーマンが仕事を終わって帰宅してもまだ明るければ、子どもと外で遊んだり、園芸を楽しんだりできるというわけです。レジャー産業などを中心に約1兆2000億円の経済効果があるとの試算もあります。この手の試算はだいたい過大なものと思った方がいいわけですが、それでもそれなりに経済効果はあるでしょう。スポーツクラブのような健康増進産業は成長分野でもあり、思った以上に有望かも知れません。
 省エネルギーについては、サマータイムの直接的な地球温暖化防止への寄与は、CO2換算で44万トンにとどまっています。今回の「改訂大綱」では、全体で1億6500万トンの削減を必要としていますので、およそ大きな数字だとは言えません。したがって、大綱でも、サマータイムの趣旨は直接的な効果よりむしろ「国民が地球環境にやさしいライフスタイルを実現する」ための「意識づけ」が主眼におかれています。それがどれほど意識づけになるのか、あるいは意識づけがどれほど現実の行動につながるのかわからないとの意見もあるようですが、これはどんなに意識の低い人でも参加せざるを得ないわけですから、それなりに意識づけ効果があると見てもいいのではないでしょうか。
 いっぽうで、サマータイムに反対する意見は、「生活のリズムが崩れ、体調悪化につながる」というのと、「(明るいうちは帰りにくいなどの理由で)労働時間が長くなる」というのが最大の理由になっているようです(連合はこの理由で反対を表明しています)。戦後すぐの時期に、短期間ながらサマータイムが導入されたことがあり、その際には同様の理由で不評だったとのことです。また、「子どもの塾通いがあるので、アウトドア活動の増加などにはつながらない」とか、「日本は欧州に較べて低緯度、高湿度なのでサマータイムの効果は少ない」などといった、賛成論の根拠に対する批判もあるようです。
 その他、通勤時間が長いからあまり意味がないという批判もありますが、これはもっぱら大都市部の問題、しかもほとんどは東京の問題でしょう。余暇施設が少ない、あるいは費用が高い、という問題もあるかも知れませんが、それもくふうしだいですし、実際に需要が出てくれば供給も追いついてくるでしょう。年に2回の切替に際する交通・輸送などの対応の問題もありますが、切り替えは週末に行われますので、深夜に調整すれば影響はあまり大きくないものと思われます。いずれも反対の根拠としては不十分に見えます。
 賛成にせよ反対にせよ、確たる根拠のない議論なので、なかなかまとまらないのも致し方ないところなのかも知れません。
 それでは世論はどうかというと、98年に実施された調査によると、サマータイムの実施に賛成が約6割と過半数を占め、反対の約2割を大きく上回った(「わからない」が約2割)ということです。さらに、「サマータイムによって労働時間が延びる」との回答は14%にとどまり、「影響ない」が過半を占めてています。
 たしかに、国民全員を巻き込む話であり、その影響も不透明な部分も多いわけではありますが、しかし、温暖化問題をはじめとする地球環境問題が人類の重大な課題になっている現実に向き合えば、できることから取り組むという姿勢はなにより重要ではないでしょうか。実際、サマータイムはそれほど大きなコストがかかるわけではなく、やると決めればやることができ、やめると決めればやめるのも簡単です。であれば、まずはやってみるというのが前向きな態度というものだと思います。「大綱」を見ると、自動車ではなく自転車をなるべく使うとか、自動車の相乗りにとどまらず、自宅でも家族がなるべく一室で過ごすといった、生活意識をかなり変えなければならない取り組み事項も出てきます。こうしたことを積み上げていかなければ、温暖化防止条約を達成するすことはできなくなります。現実に参加し、行動することが意識の転換には大きな効果を示すわけですから、国民があげて参加するサマータイムは、想像以上の成果につながることも期待できるのではないかと思います。

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