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私の職場に、ポスターが2枚掲示してあります。1枚は「愛・地球博(2005年日本国際博覧会)」、もう1枚が「日本ASEAN交流年2003」のポスターで、それぞれそのイメージ・キャラクターが大きく描かれています。「愛・地球博」のほうは、イラストの「モリゾーとキッコロ」で、モリゾーは「少年アシベ」に出てくるイエティを緑色にしたようなキャラクターで、「森のおじいさん」、キッコロはそれを小さく幼くした黄緑色で、「森のこども」をそれぞれイメージしているのだとか。まあ、要するにマンガ?です。それに対して、「日本ASEAN交流年」のほうは、「平成の日本美人」をコンピュータ・グラフィックで作画したキャラクターで、なかなかリアルな女性像です。「CG親善大使」ということで、このポスターに限らず、今後のさまざまな場面で活躍が予定されているのだそうです。ちなみに公募で決まった名前は「さくら さなえ」、趣味はスキューバと源氏物語、お寿司とエビフライと生春巻きが好な東京生まれの21歳の美大生とか。 さて、今年の3月、内閣府の男女共同参画局は、「男女共同参画の視点からの公的広報の手引き」というパンフレットを発行しました。私たち民間人の目にはなかなか触れないパンフレットですが、せめて公的広報くらいは(?)男女共同参画の理念にそったものとしよう、という趣旨で発行されたもののようです。単に女性に限らず、「内容以前に表現への反感を招くようでは、施策への理解や協力は得られません。女性、高齢者、年少者、障害者、外国人など多様な受け手を意識し、共感が得られるような表現を心がけなければなりません」と、さまざまないわゆる「少数派」への配慮を求めています。 具体的には、5つのポイントをあげていますので、その内容を順番に見ていきますと、 1.男女いずれかに偏った表現になっていませんか? ×「サラリーマンのための○○制度ができました」 ○「会社で働く人のための○○制度ができました」 ×「セミナー・シンポジウムの出席者が男性ばかりのイラスト」 ○「同じく出席者に一定割合の女性が含まれるイラスト」 2.性別によってイメージを固定化した表現になっていませんか? ×「男性弁護士と女性事務員のイラスト」 ○「男性弁護士と女性弁護士のイラスト」 ×「男の子は野球、女の子は縄跳びのイラスト」 ○「男の子も女の子もサッカーや縄跳びをしているイラスト」 3.男女を対等な関係で描いていますか? ×「男性社長が男性管理職に指示し、男女がそれを見ているイラスト」 ○「女性社長が女性管理職に指示し、男女がそれを見ているイラスト」 ×「(悪徳商法などで)男性が加害者、女性が被害者のイラスト」 ○「(同じく)加害者は性別不詳(悪魔的な絵)で男女が被害者のイラスト」 4.男女で異なった表現を使っていませんか? ×「女社長」「女だてらに」 ×「男性は鈴木さん、女性はよし子さん」(女性は結婚すると苗字が変わるものという先入観を感じさせる表現) といった留意事項がならんでいます。このホームページをお読みのみなさんには、その意味するところは解説不要でしょう。「女社長」「女だてらに」を取り上げるなら、たとえば「男芸者(死語か?)」や「男らしい」といった表現もセットで不適切な例にあげるべきではないかという気はしますが、まあ今のわが国の実態からするとこのような注意喚起になるのでしょうか。 そして、最後のひとつは、実はこのようなものです。 5.女性をむやみに"アイキャッチャー"にしていませんか? これに続けて、「女性を飾り物として使っていませんか?」という指摘があり、×事例として「水着姿の女性が描かれた火災予防週間のポスター」が示され、「内容と無関係に、女性の水着姿や、身体の一部などを使うと、『性的側面を強調している』と受け取られるおそれがあります。しかも、本来の伝えたい内容が不明確な広報になっています。」というコメントがあります。 まことに正論ではありますが、これは公的広報だけではなく、むしろ民間の広告のほうに多々見られるところです。民間にしてみれば、現実に商売をするからにはそんな建前にこだわっていられるか、背に腹はかえられぬ、といった低レベルな抵抗もあるのが現実でしょう。 そこでこのパンフレットは、「そうかといって、無難な表現で済ませてしまうと、印象には残らず、広報効果が十分あるとはいえません。もっと豊かな発想で表現したいところです。」として、×ではないが?の事例として、「消防士(この表現はいいのか?)と消防車が描かれた火災予防週間のポスター」をあげています。そして、「安易なアイキャッチャーに頼ることをやめると、「訴求内容は何か、訴求対象は誰か」という原点に立ち戻って効果的な広報表現を工夫する努力が必要になります。」ということで、○事例として「『火事になってから禁煙するのですか』というコピーのついた、寝たばこをしている男性のイラスト」が示されています。 まあ、この○事例がそれほど訴求効果があるかどうかは別として、とりあえず「寝たばこをするのは男性に限ったことなのか」というツッコミは入れたくなります(実際、依然として喫煙者は男性のほうが多いにしても、このところは男性の喫煙者は減少、女性の喫煙者は増加という傾向が続いているので、寝たばこを訴求するなら対象はむしろ女性のほうが効果的という考え方もあると思います)。とはいえ、やはりこれもわが国の現状をふまえればこういうことだ、という意図なのでしょう。 こうした観点から考えると、「日本ASEAN交流年」のポスターに「CG親善大使」の女性像が使われているのは、いささか不適切ではないかという気がしてきます(その点、「愛・地球博」のほうは、女性をアイキャッチャーにしていないだけではなく、モリゾーは一応「おじいさん」で男性ということでしょうが、キッコロのほうは性別不詳で、なかなか「男女共同参画」への配慮のあるポスターといえそうです)。まあ、これは単なる「アイキャッチャー」ではなく、「CG親善大使」なのだ、というのはそれなりの理由ではあるかもしれません(もっとも、事実上アイキャッチャーであることも否定できないと思いますが)。それでもなお、なぜ「CG親善大使」が女性でなければならないのか、という疑問は残ります。 そういえば、先般の日韓で共催されたサッカーのワールドカップでも、両国の「親善大使」はいずれも各国で売れっ子の女優でした。まあ、これはサッカーW杯が基本的に民間ベースの事業である以上、高邁な理念には目を瞑って、宣伝効果の高い方法を取らざるを得なかった、ということで一応同情できるものではあるでしょう。しかし、外務省が深く関与している「日本ASEAN交流年」は本当にこれでいいのでしょうか。現状を追認しない民間がなかなか変われない以上、まずは公的分野が率先して変わるべきではないでしょうか。 まさか、女性の外相にひどい目にあわされたから、ということではないと思いますが(当然)、男女共同参画もまだまだ困難な道のりがあるな、と感じさせる事例ではあります。 ※「日本ASEAN交流年」のポスターは下でごらんになれます。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/asean/2003_koryu.html ※「愛・地球博」のマスコットキャラクターは下でごらんになれます。 http://www.expo2005.or.jp/jp/info/character.html |