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この8日に、今年の人事院勧告が発表されました。一般職国家公務員の月給を平均1.07%(4,054円)、民間のボーナスにあたる期末・勤勉手当を0.25か月分それぞれ引き下げることを勧告しています。報道によれば、小泉首相は「勧告どおり引き下げる」と完全実施を明言したそうなので、おそらくそうなるのでしょう。ちなみに年収ベースでの下げ幅は平均163,000円とか(もっとも、いわゆる定昇は別途2%程度ありますので、平均1.07%の引き下げでは個人ベースでみて月給が下がることにはならないはずです)。それに加えて、マスコミで批判された異動補償制度の縮小や、国会で追及された通勤定期券代の支給方法変更なども含まれているようで、なかなか迅速な対応といえましょう。 これに関連して、先立つ先月15日には、「平成15年度第1回国家公務員に関するモニターアンケート調査結果」というものが発表されています。なかなか興味深い内容を含んでいますので、今回はこれをもとに今年の人事院勧告や公務員の給与一般について考えてみたいと思います。 さて、このアンケートは、一般公募で選ばれた500人のモニターが対象となっているということで、どれほどの応募の中からどのように選んだのかは明らかではないため、思わぬバイアスがかかっている可能性があることは念頭に置いておく必要はありそうですが、公募に応募した人ですから、それなりに関心もあれば知識もある人たちであることは期待できるでしょう(もっとも、この手のモニターになること自体を趣味(実益も兼ねてか?)にしている人もいるらしいので、あまり期待しすぎることはできないかもしれません)。回答率も98.6%という高率になっています。 アンケートはまず、「国家公務員プロフィール」という人事院のPRパンフレットのようなもの?を読んでもらい、その中でどこに関心を持ったか、という設問からはじまっています。複数回答で、「給与」をあげたのが370人と、これは第2位の「国民の声」の287人を大きく引き離してトップとなっているので、国家公務員の給与への関心はかなり高いとみることができるでしょう。 人事院勧告(給与勧告)については、17.4%がしくみと内容の両方を、18.6%がそのいずれかを「知っていた」と回答しています。これは感覚的には世間一般よりはかなり高いのではないかと思われますが、その役割については、複数回答で64.7%が「公務員の給与を社会一般の情勢に合うよう調整すること」と回答しており、本来の趣旨であるはずの「労働基本権が制約されている国家公務員の給与を公正に定めること」の37.3%を大きく上回っています。これは、モニターたちが「公務員の給与は社会一般の情勢に合っているべきだ」と考えていることの表れとみることができそうです。そういう意味では、今回の人事院勧告がマイナス勧告となったことや、各種手当の倹約を織り込んだことなどは、こうした意識には適応しているといえるかもしれません。 さて、民間準拠方式や、官民比較方式についてのアンケート結果では、「妥当」「おおむね妥当」がそれぞれ3分の2から過半数を占めており、一応支持されていると人事院は評価しています。そのいっぽうで、「給与だけでなく退職金・年金を含めて比較すべき」「より小規模の企業も含めて比較すべき」との異論も出ているようです。 続いて、給与水準そのものの評価については、複数回答にもかかわらず「適切」は13.4%にとどまっているものの、「全体としては適切な水準だが、地域によっては公務員給与は民間よりも高い」も34.3%ありますので、国家公務員給与はまずまずの水準だと考えている人もけっこう多いのかもしれません。ちなみに、地方に勤務する国家公務員(地方公務員ではない)の給与に関しては、「地域に勤務する公務員の給与に関する研究会」がこの7月18日に報告を出しており、「現在の公務員給与の地域差は不十分であり、今まで以上に地域の民間給与等を反映させることが必要」「俸給等を引き下げることも念頭に置いて、支給地域、支給割合等を基本的に見直した地域手当を導入」「(転勤で給与が下がる場合は)一定期間、逓減型の転勤手当(仮称)を支給」などを提言しています。こうした提言が実行されれば、「適当」と考える人がもっと増える可能性もあります。 そのいっぽうで、もっとも多いのは「倒産などによる失業リスクがないことを考えると公務員給与は高い」で54.2%、次いで「中小企業と比較すると公務員給与は高い」が51.1%と多くなっており、やはり「高い」との意見も多いようです。人材確保や職務の重要性の観点から「もっと高くてよい」とする意見は10.3%、4.9%しかありません。 しかし、本当に国家公務員の給与は高いでしょうか。私のミクロな感想としては、国家公務員1種の若手キャリア官僚の給与は、その持てる能力や職務の重要性、就労の実態から勘案して、明らかに低すぎるように思われます。若手だけでなく、たとえば官僚トップの事務次官でも指定職11号俸(2001年で月額1,346,000円らしい)ということで、たしかに安いとはいえない数字かもしれませんが、しかし事務次官の社会的ステータスを考えればおよそ高いとはいえないでしょう。逆にいえば、この埋め合わせをするために、世間で批判の強い退職してからの天下り、高額退職金といったものが必要となっていると考えることすら可能です。このアンケートでは、今後公務員制度で取り組むべきことのトップとして「天下り規制の強化」があげられますが、そういう意味では、天下りや高額退職金をなくしたいのなら、若い頃からきちんと能力や働きに見合った給与が支払われる(そして、定年までその役所で勤め上げられる)ようにすることが必要なのではないでしょうか。これは、やはりこのアンケートで、「給与決定の際に重視すべき要素」の回答が、「職員の保有している能力」「職員の実績や成果」「仕事の種類や内容」の3つに圧倒的に集中していることとも整合的でしょう。 要するに、問題は平均値より配分にあると考えるべきなのであって、1種については1種試験合格という高いハードルを超えられるような民間人材との比較で決めていけばよい。具体的には大企業、有力企業の平均ということでしょうか。2種、3種も、それぞれ同程度の能力を有する人が就職する企業を念頭に決めていくのが合理的なのではないでしょうか。そして、本当に優秀な人が必要であり、採用できているのなら、それに見合った給与を堂々と受け取ればいいのだと思います。そういう意味では、全体をひとまとめにして「より小規模の企業も含めて比較すべき」「中小企業と比較すると公務員給与は高い」と言ってしまうのは無理があると思います。 そのいっぽうで、「倒産などによる失業リスクがないことを考えると公務員給与は高い」というのにはもっともな面もあります。国家公務員は法律で雇用が保証されているわけですから、そのリスクプレミアムに相当する分は民間より給与が低くてよいというのが正論ではないでしょうか。とりわけ、昨今の厳しい雇用失業情勢の中では、このリスクプレミアムはかなり高く評価されてよいのではないかと思います。ついでにいえば、民間準拠とはいっても基本的には「クビのつながっているサラリーマン」に準拠しており、失業して一気に100%減給した、という人が何人いようが計算には入ってこないという問題もあります。これはあまり大きな数字ではないかもしれませんが…。 また、「給与だけでなく退職金・年金を含めて比較すべき」という意見ももっともなものでしょう。ただ、トータルで比較するのは技術的にかなり困難をともなうでしょうから、人事院勧告でどうこうするよりは、こうした制度ごとに民間の水準と大きくかけ離れていないかをチェックするしくみが別途必要ということではないかと思います。たとえば60歳以降の再雇用制度をみても、国家公務員については民間の実績があまりない段階で制度化されました。率先垂範するという政策的意図は認めないではありませんが、民間準拠をいうからにはあまり適正なやり方ではないように思われます。 さて、アンケートは最後に「給与制度の改善の方向」を問い、「成績査定部分を拡大する」が1位の支持を集めました。これは要するに、「遅れず、休まず、働かず」式の公務員はボーナスがぐっと下がるようにしよう、ということでしょう。次に支持を集めたのが「高い専門性などにより民間で高い給与を支給されるような人材にはそれに見合った給与を支給する」で、これは成績査定の拡大で個別的に対応することも可能ですが、やはり種別や系統、区分による格差を拡大することが必要ではないでしょうか。 さいごに、人事院勧告方式は、国家公務員が労働基本権を制約されていることの代償機能をはたしているわけですが、この際、公務員制度改革に関連して一部で議論されているように、1種は別として、2種・3種については国家公務員の労働基本権を回復し、労働条件を団体交渉で決定するものとして、人事院勧告を廃止するという選択肢はないのでしょうか。そのほうが、財政や経済情勢の実態を反映し、民間の実情も勘案しながら、適切な労働条件設定が可能であるとの考え方もありうると思います。もちろん、いまの国公労を前提に考えると、そもそも組織率が低く団交の代表者として適当かどうか問題ですし、活動状況をみても建設的な議論ができるとはとても思えないわけですが、労働基本権が確立されれば、それを機に多数を組織しうるリーズナブルな労組ができるかもしれません。人事院は組織の存続にかかわるだけに徹底抗戦でしょうが、検討に値するのではないでしょうか。 |