上司のみなさん、見られてますよ!(16.4.22)



 ビジネス誌の「週刊ダイヤモンド」に、「見られてますよ!OL1000人会議」というコラムが連載されています。すでに50回以上(ということは1年以上)続いていますから、それなりに人気があるのでしょう。MiMi生活情報研究所が運営している女性向け会員制情報サイト(会員が意見や情報を提供するとポイントでキャッシュバックされるというシステムで、収集した情報を分析して売るというビジネスモデルのようです)が実施した、いわゆる「OL」(あまりいいことばではありませんが、とりあえずここではこのことばを使うことにします)の会員1000人を対象としたアンケート結果をもとにしたコラムです。サンプルは偏っているでしょうが、オフィスで働く女性たちの一面の本音を映したものとして興味深いものがあります。私は一介のスタッフで部下を持たない身なので、まだしも比較的気楽に読めますが、現実に部下をあずかる上司のみなさんには、なかなか考えさせられる内容も多いのではないかと推測します。
 まず、記念すべき?連載第1回のテーマは「信頼できる上司はいますか?」というダイレクトなものです。これに対する回答は、「Yes」が263人、「No」が737人となっています。OLですから何人かの上司がいるのが普通でしょうが、この設問で「No」という回答になるのは「ひとりもいない」場合でしょうから、これは上司としてはかなり厳しい結果でしょう。世の上司たちに「あなたは部下のOLに信頼されていると思いますか?」と訊ねたら、「Yes」が約4分の1にとどまるということはおそらくないでしょう。さらに、「上司に相談にのってもらって助かった!と思ったことはありますか?」という質問に対しては826人が「No」。まあ、相談したことがないという人もかなり含まれているのでしょう。連載49回では「転職や仕事上の悩み、真っ先に誰に相談しますか」という設問に対し、「友人」「同僚」があわせて490人、「親」「配偶者」があわせて241人に対し、「上司」は119人にとどまっています。まあ、これには「転職」や「真っ先に」といった条件のせいもあると思いたいところですが・・・。
 28回では、「上司のマネジメント能力をどう評価しますか?」がきかれています。これに対しても、「かなり、できる」という評価は残念ながら116人どまり。「部下の好き嫌いが激しい」が203人、「危ない橋を渡らない、小心」とリスクテイク能力不足を指摘するのが171人、「プレイヤー気分が抜けていない」とマネージャーの自覚不足を指摘するのが167人となっているほか、自由回答には「仕事をしないどころか、部下の邪魔をする」「定年後の計画に夢中」などなどの痛烈な意見が並んでいます。なるほど、これでは信頼されないわけです。
 「上司の仕事に対する姿勢」を訊ねた第34回でも、「わからない」が302人で最多という結果です。まあ、これはOLという会社への関与が比較的高くない立場にいるせいもあるでしょう(本文には「付き合っているわけじゃなし」というさめたコメントがあります)。それにしても、仕事に対する姿勢がわからない上司を信頼しろというのも無理な話かもしれません。そのほかでは「仕事が好き」と「出世が生きがい」があわせて307人、「遊びのために働いている」「家庭第一」があわせて271人とけっこう拮抗しています。まあ、これはどちらがいいというものではないでしょう。
 そのいっぽうで、第8回では「上司に対し『仕事ができる!』と思った瞬間は?」という質問が設定されています。「適切なアドバイスがあった」「見事な決断をした」「部下をうまくやる気にさせた」「仕事が速かった」「経営幹部にも堂々と意見を言った」が、それぞれ246人〜119人から評価されています。どれも上司としてはうれしくなる話ですが、「複数回答可」にもかかわらず、「その他」も含めて全部の回答を足し合わせても1010人にしかなりません。ということは、かなりの人がなにも回答しなかった、つまり「そんな瞬間はなかった」ということではないのか、少々気になるところではありますが、いずれにしてもいいところもしっかり見られているということでしょう。
 また、信頼できる上司がいない人が約4分の3というなかでも、第13回の結果によれば9割以上は「あとちょっとでいい上司」ということなので、いくらかは救われるものもあります(まあ、いい上司と信頼できる上司との間にはまた距離があるのかもしれませんが)。「何がいけない?」という問いには、「もうちょっと仕事をしてほしい」「部下の仕事に関してひと言多い」「部下のプライベートについてひと言多い」「上役に対して毅然とした態度を!」などといった回答が並びます。上司各位にも、ひとつくらいは身に覚えのある人は多いのではないでしょうか。ちなみに、「机の上を片付けてほしい」「言葉づかいが少し乱暴」といった"ささやかなお願い"はほとんどが20代の人からで、30代からは「仕事内容について理解が浅い」などの厳しい意見が多数という結果になっているようです。
 こうした結果に対して、「いかにもOLらしい」というドライな見方をする人もいるかもしれません。一般的にOLは基幹的な仕事よりは補助的な仕事に従事し、勤続や社内でのキャリアアップに意欲的ではないという理解をしている上司も多いでしょう。「仕事内容について理解が浅い」人でも「あとちょっとでいい上司」だというのは、仕事における有能さが「いい上司」の要件としては必ずしも重くない、ということを意味しているとみることもできるかもしれません。そういう考え方をする人からみれば、会社や仕事により深くコミットしている上司とOLとは価値観が異なるのは当然で、したがって上司がOLに信頼されないのはむしろ自然だ、という考え方です。
 とはいえ、「OLに信頼されなくても仕方ないよ」で本当にすませることができるかどうか。現実には、上司としてぜひとも信頼を得ておきたい職場のキーマンをはじめ、基幹的な仕事に携わる人たちも、ほとんどがOLとの共同作業で仕事を進めているのが実態のはずです。OLの上司に対する不信感は、確実にこうした人たちにも伝染すると考えるべきでしょう。それは確実に職場のパフォーマンスの低下につながるはずです。
 しかも、OLが上司に求めるものも、仕事で楽をさせてくれとか、食事をごちそうしてくれとかいったものではなく(もっとも、ケチにはかなり厳しい見方がされるようですが)、「もっと仕事をしてほしい」とか「マネージャーとしての自覚を持ってほしい」といった、職業人としての本質に関わるものがほとんどです。「部下の好き嫌いが激しい」という意見を「OLらしい」と笑う上司は、部下には虚心に、公平・公正を旨にあたるべし、という管理職の基本中の基本ができていないといわれてもしかたないでしょう。
 現実をみると、OLとひとことに言っても正社員がどんどん減少し、派遣社員や有期雇用が増加しています。もっとも多様化が進んでいる分野のひとつといえるでしょう。それにともなって、職場でのコミュニケーションは難しくなっており、また、正社員であればとくに問題にはならなかったさまざまなリスクも発生しているとみるべきでしょう。OLからも信頼を得られる上司のマネジメントは重要性を増している考える必要がありそうです。このコラムの「見られてますよ!」というタイトルは、「あなたがたは私たちに関心がないかもしれないが、私たちはあなたがたをしっかり見ています」という意味がこめられたものでしょう。上司の方々には肝に銘じていただく必要があるかもしれません。
 企業としても、職場コミュニケーションの核としての中間管理職の役割をあらためて評価しなおすことが必要ではないかと思います。一時期、中間管理職が妙に悪者視され、管理職ポストを減らすこと流行しました。もちろん、不要なポストを整理することは必要でしょうが、一部には行き過ぎた実態もあったのではないかと思います。この問題に限らず、職場のコミュニケーション不足が一因となっている問題はほかにもあるように思います。中間管理職不要論はそろそろ再考の時期にきているのではないでしょうか。

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