組織拡大のターゲットは(16.1.8)



 昨年末に発表された厚生労働省の「平成15年労働組合基礎調査」によると、わが国労組の組織率は低落傾向が止まらず、昨年はついに19.6%と20%を割り込み、過去最低を記録したそうです。
 まず、調査結果のポイントを見てみたいと思います。推定組織率は前述のとおりですが、労働組合員数も1,053万1千人で前年に比べ26万9千人、マイナス2.5%の大幅減で、9年連続の減少となっています。
 産業別には、製造業では中国などからの輸入品に代替されて国内の空洞化が進んだ結果か、組合員数が14万4千人減(-4.7%)と大きな減少となっています。また、厳しいリストラの進む金融・保険業でも3万8千人減(-4.6%)と組合員数を大きく減らしています。推定組織率は、電気・ガス・熱供給・水道業が58.4%と高く、公務53.6%、金融・ 保険業51.7%が5割超えとなっています。
 民間企業労組を企業規模別にみると、まず組合員数は815万1千人で、前年に比べ20万8千人の減と、やはりかなりの減少です。うち、従業員1,000人以上の大企業で469万6千人、全体の57.6%を占めています。推定組織率のほうも、1,000人以上の大企業では51.9%と依然として高くなっていますが、前年に比べると2.9ポイント減と大きく低下しています。しかも、これが100人から999人の企業では16.6%とぐっと低くなります。99人以下ではわずか1.2%にとどまっています。
 パートタイム労働者については、労働組合員は33万1千人と前年比13.1%増と大幅に増加しています。連合はじめ、各組織が問題意識を持って取り組んだ結果が数字で現れているといえるでしょう。とはいえ、推定組織率は3.0%にとどまっており、まだまだ組織化の余地は大きいようです。
 さいごにナショナルセンター別の組合員数を見てみますと、まずは連合が669万4千人で前年に比べ13万5千人の減少、共産党系の全労連が76万4千人で2万3千人の減少、全労協が16万人で9千人の減少と、軒並み組合員を減らしています。
 これについて昨年12月18日付日経新聞は、「若者の組合離れに加え、企業が正社員をリストラして組合加入率の低いパートなどへの置き換えを進めたことが響いた」と述べ、厚生労働省の「製造業や金融・保険業の大企業を中心にリストラが進む一方、新規採用を抑制し、代わりにパートなど非正社員を増やしているのが原因」というコメントを紹介しています。「若者の組合離れ」というのも、組織率の高い大企業が新卒採用を絞り込んでいる結果でしょう。また、大企業を中心に、高齢化に自然減が加わって非組合員である管理職クラスの比率が高まっていることも一因ではないでしょうか。
 たしかに、昨今ではベアゼロやベースダウンが珍しくない状況にあり、労組にとっても逆風が強かったことも事実です。しかし、現在の労組が製造業・大企業・正社員を中心とする構造にあることは調査結果からも一目瞭然であり、この3つはいずれも雇用が減少しているわけですから、組織率低下はまさに構造問題であるといえそうです
 労組としても当然ながらこの結果を深刻に受け止めているようで、連合は即日、「この結果を厳しく受け止める」との事務局長談話を発表しました。その中で、99人以下の小規模企業やパートタイマーの組織率の低さに強い問題意識を示すとともに、この10月の第8回大会で引き続き組織拡大を最優先課題とし今後2年間で54万人の組織拡大をはかるとの目標を掲げたことをあげ、「パートタイム・派遣・請負等で働く非典型労働者や中小・地場零細企業で働く人たちの組織化を重点に、連合本部・構成組織・地方連合会が一体となって取り組みをすすめる」との姿勢を示しています。
 連合も昨年結成10周年を迎えたわけですが、思い返せば10年前の設立時には、官民統一「800万連合」を標榜し、「今後3年間で200万人を組織し、1,000万連合をめざす」としていました。それが10年後にはほとんど正反対の形で実現してしまったことになります。かつては、組織率は低下しても、組合員数は増えていたので、とりあえず組合活動を維持することはできる、という理屈も一部にはあったと記憶していますが、さすがに9年連続の減少となっては、活動の基盤となる財政なども揺るぎかねない状況であり、労組としてもかなりの危機感を持たざるを得ないのではないでしょうか。もともと、組織拡大は労組の生命線といわれるいっぽうで、組合員の払った組合費を組合員以外の人のために使うオルグ活動はなかなか進めにくいとも言われてきましたが、そうもいっていられない状況ではないかと思います。
 非典型や中小に重点をおくという取り組み方針は、調査結果をみても手薄な部分ですから、妥当なものでしょうし、必要なことだろうと思います。しかし、それには組織や活動の実態をかなりの程度改める必要がありそうです。現状の企業別組合の枠組みだと、どうしても大企業、正社員中心ということにならざるを得ないでしょう。「連合評価委員会」が「企業別組合の限界を突破」を提言したのも、そういう趣旨でしょう。しかし、それはことばで言うほど簡単なこととは思えません。そもそも、それが容易にできるのであれば、すでに非正社員や中小企業の組織化も進んでいるはずではないでしょうか。
 非正社員や中小企業への取り組みが重要であることはもちろんですが、それに加えて、そもそも労組の金城湯池?だったはずの大企業で3ポイント近く減少していることにも注目してみていいのではないかと思います。新たな展開と並行して、従来の基盤を再整備し、足元を固めなおすのです。たとえば、日経新聞も指摘しているとおり、分社化にともなう問題があります。分社化でできた新会社に労組がないことが組織率低下につながっているならば、新会社での労組の設立や、新会社転籍者の従来労組への継続加入といった取り組みを強化するわけです。もちろん、従来もそれは取り組まれているのでしょうが、それを強化する取り組みのほうが、非正社員や中小企業への拡大より労力に対する成果が大きいのではないでしょうか。
 それに加えて、いわゆる「擬似管理職」の問題があります。実態としては労働組合法上組合員になれない「使用者の利益を代表する者」にあたらないにもかかわらず、労働協約で非組合員とされている人は、大企業を中心に相当数いるものと推測されます。昨今のリストラ横行のなかで、こうした人たちの保護が不足する場面も数多く見られるといわれますので、ここを組織化する可能性は十分あるのではないかと思います。
 もちろん、労組の有無を問わず、すでに労使関係が安定的に確立している大企業で組織拡大することは、別の難しさがあるだろうと思います。しかし、組合員の半数近くを占めるこの部分で、取り組みの手を緩めてもいいかどうかは難しいところではないでしょうか。

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