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この17日の読売新聞夕刊のコラムで、「今年度の中途採用者40人のうち8人が死亡」という記事が掲載されました。びっくりするような見出しですが、少し引用してみましょう。 『東京都大田区のベンチャー企業が先月、ホームページの新社員募集コーナーに、氏名、年齢、住所付きの“死亡社員リスト”を掲載した。電話で真偽を確かめると、「リストは架空のもの。実際に亡くなった社員はいない」との答え。「不謹慎では」と指摘すると、すぐに死亡社員の年齢を「三歳」に書き換えるなど、ちょっと見れば冗談とわかるように修正された。だが、今もリストそのものは削除されていない。』 掲載されたのは1月13日で、採用予定数の下に「2003年度中途採用 40名採用(内、死亡者8名)」と書かれ、その下に「飯塚裕太郎 兵庫県神戸市 35歳 磯川寅吉 千葉県習志野市 67歳」などと8人分のリストが続いています。その下には、やはり冗談とわかるようにということか『「これを見てびっくり!した人は正常」「これを見て問い合わせしてくる人は不採用」』との記述も追加されています。 この会社、この記事では社名はふせられていますが、テンポズバスターズという中古厨房機器取扱のJASDAQ上場企業で、社長の森下篤史氏が2000年にニュービジネス大賞、2003年にはアントレプレナー・オブ・ザ・イヤーを受賞している優良ベンチャーです。マスコミにも多々登場しているようです。ちなみに問題のページはhttp://www.tenpos.co.jp/employment/で、「批判には耳を傾けるが、非難されたからすぐやめるということはしない」とのことですから、まだしばらくは見られるでしょう。 さて、「死亡社員リスト」の意図するところは、同社によれば「平凡な求人では平凡なタイプしか集まらない」ということなのだそうです。「努力すれば報われる、などと考えている常識人ではやっていけない」「優秀で個性的な、『死亡社員リスト』を面白がるような常識にとらわれない人材を求めている」とのことで、「死人が多数出るほどの激務であることを承知せよ」という趣旨ではないようです。社長の森下氏も日経Bizキャリアのインタビューに対し「成長の最大の壁は人材不足。新卒だけでなく大企業のリストラが増える一方なんで、その中から年齢を問わず優秀な人を募ろうと思っています。」と答えており、人材確保に力を入れていることは間違いないようで、その力の入り方がなかなかユニークだということのようです。 実際、そのユニークさ(そして、はっきりいってかなりの悪趣味さ)は「死亡社員リスト」にとどまりません。 たとえば、採用予定数の上には「国籍・年齢・性別は問いません。チビ・デブ・ハゲ・75歳 すべてOK!」と書かれています。森下氏もいっている「年齢を問わず」という方針をユニーク(だが差別的で悪趣味)に表現したものでしょう(ちなみに、「死亡社員リスト」には「74歳の人」や「インド人」が含まれていますので、国籍・年齢不問の訴求手段でもあるのかもしれません)。もっとも、さらに上の方には「求める【動詞】 (1)流行ってると買いたくなる、面白そうだ やってみる若者を弊社に欲しいと思う心 (2)失敗を恐れず、試行錯誤するこを(ママ)楽しめる若者を弊社に採用したいと思う心」と比較的常識的な内容が書かれたイメージも掲載されており、そうはいってもやっぱり若い人が欲しいという本音が窺われて笑えます。 また、「採用基準」という欄があり、そこには「採用したくない人…のぞきをしたら見つかった。反省し、もうのぞきはしない人」「欲しい人…のぞきをしたら見つかった。反省し、次はみつからないようにもっとうまくやる人」などと書かれています。どうも、こうしたコンプライアンスを揶揄したような記述がお好きらしく、「入社試験」という欄にはこんなことが書いてあります(若干読みやすく手をいれてあります)。 あなたが食品会社の社員だとして社命で「日付を新しいものにつけ替えよ」という指示があった。 どうしますか。 答1. 社命とあればやらざるを得ない… 君のような社員を会社従属人間という。採用はするが万年下働きか大幹部。 答2. 社会的な不正な事はしない… 君は単純で幸せ者。他の会社で働け。 ではテンポスの期待する第3の答を「□□□□□□□□□□□□□□□□□」 なんでも、これも世間で話題になる前は「食品会社」のところには「雪印」という固有名詞になっていたのだそうです。 ちなみに、ページの一番下には「採用方針」「採用手段」という欄があり、ここには「新卒採用はリクナビを通じてエントリー・会社説明会の予約」とか、中途採用は「一定の課題によりレポートを提出し、企画力、判断力などを確認の上、当社の社員として適した人材か否かを人事担当者及びエリアマネージャーが判断」などとまともなことが書いてあります。ということは、ここまでは全部冗談ということです。 ただでさえわが国のビジネス界には冗談を歓迎するムードが薄いうえ、このページの冗談はかなり悪趣味なので、私もおよそ好きにはなれませんし、顧客や取引先の顰蹙を買うのではないかと心配になりますが、社長の森下氏も前述のインタビューで「テンポスの仕事はきつい、汚い、危険のいわゆる3K業務であまり人がやりたがらない。」と言っているくらいですから、本当に人材確保には苦心しているのでしょう。であれば、もともと人が来ないのですから採用という面では失うものはないわけで、これが評判になり、本当にこれを面白がっていい人が応募してきてくれれば大成功という考え方もできそうです。世間の顰蹙と人材確保を天秤にかけて、人材が重ければありうる手かもしれません。なにより、コストがほとんどかかっていないというところがベンチャー魂というところでしょう。 ついでにご紹介すると、「テンポス精神17ヶ条」というのもホームページで公開されており、これまたなかなか型破りです。好き嫌いは分かれると思いま すが、ご関心があれば読んでみてはいかがでしょう。http://www.tenpos.co.jp/profile/index.html |